その1 チェルンザ商会のマチルダ
『リレー小説★バトル』
これはたいへんふざけた企画です。
姉→みつな
妹→ぎょうこ
が、交代で一話ずつお送りします。
大変な内輪受け企画であります。
ただおもしろいとおもうものを、好きに書く。
また、打ち合わせも無く書いてはパスし、続きを書くということによって
『どれだけ相手をおとしめ、はずかしめ、追い込むことが出来るか』
を、双方狙って行く企画です。
〜それでもいいよ、という方だけどうぞ、お楽しみ下さい〜
2009年10月14日・・・上記の試みから早、四ヶ月。
『飽きた。ラスがあんたの書いてるどっかの主人公に似てきて 書く気がしなくなった。私はもうノルマ達成したから ばいば~い!』
そんなこんなで話がまとまりまして。
10話以降はみつな一人で書くことになりました。
あああああああ。
よ そ う ど お り か !
初めて訪れてくれた方も、今まで読んでくれた方も、混乱させて申しわけありませんがお付き合いいただければ幸いです。
――私は生まれつき、商人だと思うの。
★ ☆ ☆ ★
「わかったわ!お父様、このマチルダに任せておいてっ!これを陛下にお届けすればいいのね?」
仰せ付かったのは一通の封筒を、この国の第一権力者サマことすなわち陛下にお届けするという――。
何とも荷の重いお役目。
内容はこの我が家の危機を乗り切るための『秘策』なるものが、したためてあるって寸法よ。
「頼んだよ、マチルダ。おまえだけが頼りなんだ」
いつもはものすごく脂ぎっていて、てかてかしたお父様のお顔もどうやら油切れみたい。
こんなに人は短期間で人相変わるものなのかって、ちょっと感心してるわお父様。
せっかくだから、もう少しお腹とかアゴとかにつきまくった、余計な脂肪が消費されると良いわねぇ。
そんな気持ちはモチロン告げずに、流石の私も神妙に頷いて見せたわ!
はい、きた!大恐慌!
ちなみに来たっていっても、この我が家『チェルンザ商会』だけにって所なんですけど。
どうしろと。商会に関連している仕事人はモチロンの事、うちの家に勤めてくれている人たちもさぁ。
豪商と謳われ栄華を極めてるんじゃないの?なんて、いい気になって私は十七年も生きてきましたよ。
それが一夜明けたら呆気ないほど、貧乏商家代表の我が家。
そもそも商人なのに赤字出すなんざ、恥晒してるようなものですよ。
ってぇワケで城行くぞ、城ぉ!
どうやって、この危機を乗り切れって?それは今必死で考えてるよ!モチロン、これからだって考える。
何も持たない私目の持っているものといえば、嫌になるくらい健康な体と立派なおつむがあるんだから。
無いとか言わせないよ、絞り出すんだよ。
『何とか城の人間に上手いこと取り入る方法をさぁぁ!』
ここで恥かいてる私なんかよりも、もっともっと恥さらしている存在があるのさ。
それが国だ。国政だ。何でイキナリ飛躍するかねぇ、とかいうツッコミは受け付けないよ。
だってさぁ、うちはこのサンザスの国にはさんざら貢献してきたと思うんだよね!
うちが商売事業を展開すれば、それだけ人が、お金が動く。
人を雇って働いてもらって、お給金を支払って。また、そうして潤った人たちが生活していく。
儲けた分ちゃんと、税金だってごっそり納めてきましたともよ。・・・多分?
え〜・・・まぁ。そこら辺はさておき。
そう、実際に動いてきたんだから、貢献してきたと胸を張っていいだろうよ!
うちが失脚すればその分、うちに関わっている全ての人たちも路頭に迷う。
これはくつがえせない、真実であり現実なんだよ。
人民を泣かせたままにしておくなんざ、国家の恥だろうよ。
とまあ、正当性を主張すべく〜張り切って乗り込んだはいいけれど〜。
★ ☆ ☆ ★
『チェルンザ商会のものです』
そう告げたら嫌にあっさり通されて、やや拍子抜けしたよ。
しかも・・・何だこの華麗さはって成金の私でも驚いたくらい、質のいい調度品でまとめられた部屋だったから余計に。
てきとーに通りすがった風の人をつかまえて、事の詳細を説明したらその人自身がこうやって案内してくれたってワケ。
何故だろう?まあ、身なりは上等な服着ているし・・・だからといってこうもあっさり小娘城に上げていいのかね?
防犯策がなっとらんのではないかね?
ま・・・都合良く進んで、私にしてみたらツイていたけれども。
「ああ。君の家の失脚は自業自得だから」
私が意気揚々と提出した封筒を開封しながら、この若い(といっても私より年上そうだが)兄さんに言われた。
(何だと?何がだ、この若造!)
兄さん、髪が年の割りに白っぽい。
いや、灰色で艶もあるんだが、遠目にはちとお年を召した方なのかと思う。
実際そう思ってしまったから、この兄さんが振り返った時はびっくりした。
若い。若いのにお城勤めで、髪に影響でたのかなと少し同情しながらも封筒を差し出したのだが。
『陛下に』って私ちゃんと言ったよな?
それなのに、なんでこのお人は勝手に空けちゃってくれてんのよ?
何だろう。耳が遠いのだろうか?やはり若く見えるが実際は?
と、ひとりで混乱してしまった。
「豪商チェルンザ商会は莫大な借金を負った。それは自業自得、としか言いようが無い」
(はぁ!?聞いてないっ!)
あまりにさらりと言われたので、反応しようも無くただ固まる。
「君の家は差し押さえになる。そうか・・・ご両親は何も言わなかったのか?
君のご両親は国外追放になったから。商人としての復活はまずは難しいだろうね。
商人としての権利は全て剥奪したから」
「な・・・なななな!?はぁ?」
「君の父上は商人の守るべき法を犯したんだよ」
「たとえば?」
「そうだね。有力貴族への賄賂やら、市場の独占を図っての賄賂、納税額をごまかすために架空の出納帳の作成、及び税務機関への賄賂・・・払う金額があるのならば納めたほうが早いと思わないか?」
ごもっとも。
私はお父様のあの、たぷたぷのお腹に容赦の無い一撃を見舞う事を決心していた。拳を固く握り締める。
「それは、本当なのですか?」
「ああ。事実だ。何だったら資料を見せようか?」
「いや。いいです・・・また今度で」
「遠慮せずともきちんと公開して行くよ――世間一般に広くね?」
「!?」
うっわ。この兄さん、怖いぃぃぃ!!笑顔なんだけど、全然目が笑っていないよ!
それどころか『くだらない姑息な手立てを尽くして利益拡大を図ってくれたおかげで、余計な労力使わせやがってふざけんな。』って、言ってる!
言ってるよ、絶対・言ってる!ひーーーー!!!
(ゴメンね、兄さん。もしかしてそのせいで、髪に影響とか出た?ゴメンね、ごめん!)
じり、と思わず後退してしまう迫力だった。
兄さん、何かがくすぶっているみたいだよ。
ぶつけどころの無い怒りが、噴火寸前の山のように。
ぶつけるんだったら、あの三段バラと二重アゴにするといいよ!うん!
そこではた、と思い当たる。
そうだよ、お父様めぇ!!
「あ、それは。し・・・失礼いたしました。さらば!ごきげんよう!!」
国外追放だとぉぉぉぉ!?
娘を、一人娘を置いてか!置き去ってか!
(ありえる。くっそぉ、今すぐ戻ればまだ間に合うかも)
★ ☆ ☆ ★
「待った。マチルダ」
何だ、その俊敏さ。
驚くよりも、真剣に恐怖を覚えてしまった。
兄さんに二の腕を掴まれてしまっていたのだ。結構、距離あったよぁ?と思い当たったとたんに、汗が吹き出す。
「な?何だって私の名前を?」
「この手紙に書いてあるから」
「そうですか。それでは。長々お邪魔しました〜・・・」
自由な左手をひらつかせて見せたのだが、兄さんの手は緩む気配すらない。
「どこへ?」
「もちろん。お暇するに決まってますわぁよ?」
「だから、どこへ?」
「う、うちに決まっているじゃないですか!放して下さいよ、これでも予定が詰まってるんですから」
あのデブを全力で責めるとか。
あの、三段バラに拳を見舞うとか。
あんの、たるんだアゴめがけて頭突きを食らわすとかっていう予定がね!目白押しなんですよ!
「言ったろう?君の家は差し押さえになるって。家財道具も全部含めてね。
だから帰ったとしても、立ち入る事は出来なくなっている」
「え?」
「マチルダ・チェルンザ嬢。君の事、どうかよろしくとお父様より伝言だ。
ついでに言うなら『足りない罰金の分は娘をぞんぶんにお使い下さい。』とある」
「は!?はぁああああああ!?」
「本当さ。見る?」
「貸せっ!」
ひったくる。両手が震えて仕方が無いから、文字がなかなか頭の中に入っていかなかった。
「ね?」
「”ね?”じゃないよ、兄さん!ねって言われて、はいそうですかって納得するバカどこにいるんですか」
「なっちゃいなよ、マチルダが。バカに」
「ナ・ゼ!!」
「このまま帰ったところで君は路頭に迷うだけだし。しかも無一文だ。だったらここで、借金のカタになって働いた方が効率がよくないか?」
「よかあないよ!さっきから何を勝手ばかり・・・!大体からにして、そんな罪人の娘雇う余裕があるのか、この城は」
「あるよ」
「うそだ」
「本当だ」
「なぜだ」
「疑り深いな」
「信じられるか」
「陛下の許可は貰ってあるからね。というよりも、それを条件の上で『国外追放を許可する』と契約したんだ」
「――逃げたのか。逃がしたのか・・・お父様を」
「まあ・そうなるか」
「陛下に会わせろっ!」
「会ってどうする?」
「そりゃ確かめたい。色々と」
「今日は無理だ。でも三日後くらいなら」
「わかった。出直してきます」
「・・・だから」
ぽんぽん言い合った後で、兄さんがぐいと掴んだままの腕を引っ張った。
聞き分けが悪すぎるとお怒りなのだろう。そんなの、知ったこっちゃあ無い。
★ ☆ ☆ ★
腕を引いたがビクともしない。
だんだん腹が立ってきた。
「放しなさいよ!」
まさか自分よりも頭二つ分は高い兄さんと睨みあうはめになろうとは。
きっと睨み据えた先に、静かに受け止めるかのような水色の瞳があった。
さすがに城使えな事はある、端正なお顔の兄さんだと思った。
兄さん、まつげ長すぎじゃないの?鼻筋は通っているは、眉もきりっとしているは。
やたらに整った顔立ちは、どこかで見たような?いやいや。これだけの美形見たら記憶にあるだろうよ。
(それにしても、兄さん)
やけに今回の件については詳しそうだ。兄さん、財務担当員かよ?――訊いてみる。
「・・・アナタ、何なの?誰?陛下の側近か何か」
「まぁ、そうだろうな」
「ふぅん?」
「俺を知らないのか、マチルダ?」
「初対面だよ!知るわけ無い!」
「・・・・・ライザスだ。マチルダ」
「わかった。ラスね。どうでもいいけど、呼び捨てするな。許可してないよ」
「・・・・・・。」
「なぁによ?」
「俺の名はライザス・ガディ・サンザスだ。忘れたのか?まさか知らない?」
「さ〜・・・?」
言いながら頭を掻いてみた。ぽりぽり。
ん?ん〜〜〜?・・・んん!
サ・・・サンザス。って、さぁ!
「サッ!?サンザス?」
★ ☆ ☆ ★
この国の名前と一緒。と、言う事はですね。コイツは。兄さんは。
「そうだ。君の家はこの国に対して負債を抱えた事になる。よって君もまた同罪だ」
「権力ふりかざすの反対〜」
おい。何で一国の王子が小娘の相手をしてるんだよ!!
『先手』
姉・みつなが書きました。
ものすごく描写は少なめ設定で、勢いに乗せてひたすら物語の進行を優先したいと思います。
さて、続きは妹・ぎょうこに委ねたいと思います!
・・・ドッキドキです。色んな意味で。
どうよ、サブタイトル。ぎょうこ好みの猛者っぽい感じがしない?
(連絡ないから)タイトルは勝手に決めたわよ。