現実
でも「夢の中でわざと体調を崩す」以外に解決方法が何も思いつかなかった私は覚悟を決めた。死ぬまで行かなければ大丈夫、だって具合が悪いままずっと何年も夢の中で過ごしてたじゃん。
夢の中で起きるたびに食べ物も水も拒絶していると、現実の方の私は今まであんなに検査しても原因も何も分からなかったのに急にどうしたんだろうと思うほど見る見るうちに回復していった。
体感で、夢の中で過ごしている時間も入院する前みたいにどんどん短くなっていく。
ああ、もう違う夢が見たいとか贅沢言いませんから、このまま治りますように。だいぶ回復した私に喜ぶおお母さんの言葉に私もホッとしながら「これで良かったんだ」と胸の中で呟く。
相変わらずあの夢は続いているけど、もう大丈夫。あっちの世界で具合が悪いままなら現実の私は元気でいられる。
あそこは私の夢で、奇妙な同期については自分は思い込みが強いだけなんだ、で終わりにした。
考えるのはそれで終わらせたけど、まだ私の夢は同じ内容が続いている。夢の中の私の家族やお世話係はみんな私が起きるたびに大袈裟に騒いで、セジュもずっと泣いてて私の夢なのになんだかとても申し訳なくなる。
「リュー……」
涙の混じったその声に、私はかける言葉が見つからなくてそのまま無言を貫き通す。目を開けてセジュの顔を見る事もできなかった。どうして、どうして私の夢なのにこんなにつらい思いを毎回しないといけないの。
夢なのに。夢でしょう?
私は目を閉じて、逸らして、逃げるしかできない。
早く死んで。早く死んで。夢の中の私が今すぐ死んでくれればいいのに。今では起きている時も夢の中の事をずっと考えている。
夢を見るのはもう3日に1度になっていた。それだけ夢の中の私の意識が戻らないんだろう。
向こうで目を覚ますたびにセジュはひどくつらそうに泣いて、私はそれに応えずまた意識を失うまで瞼を閉じる。
どんなに嘆かれても私の現実はここじゃない。夢の中だけで生きていくなんててきないんだから。