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夢が現に





 

 


「……セジュは、どこ?」

「セジュとは?」

「気がついたらいつも私の部屋にいる男の人よ。白い服を着た、銀髪の……」


 1日ぶりに夢の中で目覚めた私を取り囲んで騒ぐ彼女達が落ち着くのを待って、聞けば何でも答えてくれるセジュを呼ぼうとお世話係にそう尋ねると首をかしげられた。

 ニックネームだと分からないのか、でも一回しか聞いてないあのよく分からない長い名前なんて覚えてない。


「銀の長い髪で、金色の瞳で……女の人と間違えるくらいに綺麗で、目はぱっちりしてた。白い服に金色で……ああ、あれ。あの壁にかかってるやつそっくりの模様が入った服をいつも着てるの。けど真ん中のマークがあれじゃなくて太陽みたいなやつだったな」


 私は彼の見た目を言葉で説明すると、お世話係の人はだんだんと目を見開いて驚いた顔になっていき、服の模様について伝えた時には今にも叫びそうなほどだった。


「リューイカ王女は我が国の守り神の加護を授かっていたのですね!」

「守り神……?」


 気圧されそうになるが、すぐに立ち直る。あーわかった、そういう設定ね。新しいやつ。私ってば本当に自分が物語の主人公になるのに憧れてたらしい。


「だって……みんなも見てたでしょう? 銀髪の男の人……私のベッドの横に、よく居たよね?」

「リューイカ王女の部屋に親族でない男性が入れるわけがございません。扉の外には騎士も立っておりますし」


 それこそ神様でないと。そんな声は私の耳に届かなかった。バクバク暴れる心臓の音にかき消されてしまう。

 夢だと思ってたから、気にしたことなんてなかった……気が付いたらいるのも、部屋の中に突然現れるのも……


「じゃあ……私が、いつも喋ってた人は、誰……?」

「我々の目には見えないので分かりかねますが、リューイカ王女は妖精か精霊か、高貴な存在の言葉を聞けると皆噂しておりましたよ。この世のものとは思えないような美味しい料理を生み出したり、火山灰で不作に悩む地域の農地改革や川の氾濫、伝染病も全部リューイカ王女の助言が解決なさったではないですか。精霊様のお力かと思っておりましたが、神託だったなんて」


 違う……だって、夢の中だから。目が覚めた時にスマホでちょっと調べた事を次の夢で言うだけで解決策が見つかるのも、私にとって都合が良い、ここが夢の世界だからで……

 

 陛下と王妃殿下にもお伝えしないとと、張り切ったその人は別の人を呼んでまた大騒ぎになってしまった。




 まだ私の体調が優れないんだからとお医者さんが割って入って、夢の中の両親はやっと部屋から出て行く。相変わらず、夢なのにすごい疲れる。疲労感はこんなリアルじゃなくていいと何度思ったことか。

 ひと息ついて、改めて現状を確認した。夢の中の私には右手首の痣もなくなっていて、「いっそこの中で死んだら夢を見なくて済むんじゃないか」と考えていた私はショックを受けた。

 こっちの世界でついた傷は現実にもあらわれて、私には見えて痛みも感じる。夢の中の体が死んでそれで解決すれば良いけど……もし、私の無意識に死ぬような痛みが残ってしまったらどうしよう。それに、こっちでも死んで、現実でも目が覚めなかったら……


 喉がギュッと締まって、呼吸が浅くなる。


 夢だ。これはきっと夢だ。そう思いたいのに、私の頭の中でどこかが「本当に?」としつこく問いかける。


 一回も破綻した事のない、設定の凝ってる夢が続いてるだけだと思っていた。

 そうじゃなかったら。……そうではなかったのなら、私は……どうなるの?

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