・ようこそマク・メルへ
再告知
前話の投稿をミスっていました。
話が飛んでいるなと思われた方は、1話戻って下さい。ご不便をおかけしてしまい、申し訳ありません。
丘からマク・メルの崖を見つめて統星とプラチナの到着を待つと、やがてカラスのような黒い影が空を八の字に踊った。
返事としてこちらは鏡の破片を持って、朝日を向こうへと反射させる。
それからすぐに俺は中枢へと下りて、魔大陸に浮上と移動の命令を出した。
大地がグラグラと揺れた。
これで地上の勢力の介入を受ける前に、安全な空の上へと離陸出来たはずだ。
降下作戦の成功にホッとため息を吐いて、俺は螺旋をたどって地上へと戻った。
「レグルスッ、連れて来たよーっ!」
「オ疲レ様デス、レグルス様(*・ω・)」
モニュメントを離れて花園を抜けると、段々畑の坂道をニアが歩いて来た。
その頭上では統星が気持ちよさそうに空を泳ぎ、そしてニアの肩の上には、映像装置越しではないプラチナの姿を見つけた。
「は、初めまして、神様……。天国に連れて来てくれて、ありがとうございます……」
「いや、だから神様じゃないってば……。統星、誤解解いておいてくれもよかったじゃないか……」
「ハイ、レグルス様ハ、マク・メル、ノ正統ナル支配者デス(*´ω`*)」
「じゃあ、やっぱり神様ですか……!?」
「だから違うって……」
統星はおかしそうに俺たちのやり取りに微笑んでいた。
「だけどここって、天国みたいに綺麗ですよ……? 本当に、天国じゃないんですか……?」
「嬉シ……。天国……ソレハ最高ノ、賛辞デス(u_u*)」
「よかったね、ニア! あのね、プラチナちゃん、ここはニアが管理してるんだよっ、全部!」
「全部、ですか……凄い……」
プラチナはグルリと周囲を見回して、大きく目を広げて、美しいマク・メルの大地とニアに目を奪われた。
まだ新しい生活への実感が沸いていないようだった。
「プラチナ」
「はい、なんですか、神様……?」
「だからレグルスだって」
「わかりました、レグルス神様ですね」
「ちがーうっ! 俺はただの人間だと、何度言えばわかるんだよ……。いや、そうじゃなくてさ」
「はい……?」
俺は小さなレディの前に膝を突いて、花園で摘んできた白薔薇を捧げた。
一応これでも元王子だ。こういうのは慣れている。
「もう大丈夫だよ。もう誰にも君に酷いことはさせない。これから俺たちと一緒に暮らそう、このマク・メルで」
「ぁ……神、様……。わ、わたし……もう、平気なの……?」
プラチナは泣き笑いを浮かべながら白い薔薇を受け取って、それを小さな胸に抱いた。
「もちろんだよ。ここには俺と統星とニアしかいなくて寂しくてさ。プラチナみたいなかわいい家族は大歓迎だよ」
「うわ……っ」
「うわっ、なんだよおい、統星!?」
「だって、うわぁ……レグルスって素でそういうこと言っちゃうんだ……」
言いたいことはわかるが俺は元王子であり、バリバリの元王太子だ。
王族っていうのは、こういう役回りをする人間なんだよ。
「大事なところなんだから水を差すなよ……。ってことで、俺は神様でも、レグルス神でもない。君の新しい家族だ」
「家族……。レグルス……お兄ちゃん……?」
その期待混じりの弱々しい一言に、ズキュンッと来た。
「あっ、ずるい! だったらあたしのこともお姉ちゃんって呼んで! プラチナちゃんみたいなかわいい妹が欲しかったの!」
「えっと……統星お姉ちゃん?」
「プラチナちゃん!」
泣き笑いを浮かべる少女を統星が抱き締めると、鳴き声は痛ましい嗚咽に変わっていた。
……さて、そろそろお兄ちゃん神は後始末に入るか。
「あ、ちょい待ち! ねぇレグルス、マク・メルの針路……これでいいの? 方角、あっちだっけ?」
「ああそれ? まあちょっとね」
「ちょっとって、なんか嫌な予感するんだけど……?」
「統星たちは気にしなくていいよ。終わったら元の起動に戻すから」
俺は後始末のために2往復目の道を歩いた。
これからすることは、プラチナや統星が知る必要なんてないからな。




