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・可哀想な少女を浮遊大陸に連れ去ろう 2/2(差し替え版

ごめんなさい、前話と同じデータを投稿していたので、差し替えました。

「起きて、レグルス。少し早いけど、そろそろ始めようよ」


 夜明け前、気の早い統星に揺すり起こされた。

 寝ぼけまなこを擦って起き上がり、東の空を確認すれば――彼方に夜明け前の白い光が浮かんでいる。


「地上はまだ夜だぞ……」

「だけど少し早めに行動しても損はないでしょ!」


「そうだけど、少し入れ込み過ぎだと思うぞ……。ニア、マク・メルは目標ポイントに到達したのか?」

「ハイ、昨晩ニハ。後ハ、マク・メル、ヲ降下サセ、統星様ガ、彼女ヲ、救出スルダケデス。オ手伝イ、出来ナクテ、スミマセン……(T_T)」


 よくわからないのだが、ニアはあのマスドライバーやマク・メルを操作する権限がないそうだ。

 なのでこの作戦は、俺と統星の手だけで遂行しなければならない。


「十分だよっ! マク・メルを降下させる方法、ニアが教えてくれたんだよっ!」

「それに仕事ならある。ニアはあの崖まで統星を乗せていってくれ」

「ハイ、ゴ命令ト、アラバ……!(*´ω`*)」


 簡単に蒸かし芋で食事を取って、俺たちは崖へと向かった。

 東の空がちょうど日の出を迎えていてまぶしい。対して地上の方はまだ薄暗く、夜と朝の境界線が大地を白と黒に彩っている。


「どうしよ、レグルス……。なんか落ち着かない……あたし、ちゃんと成功させられるよね……?」

「その前にあっちがちゃんと来てくれるといいな」


「来るよっ、そんなの来るに決まってるよ!」

「とはいえ、一晩寝たら我に返ることなんて、いくらでもあると思うぞ」


 俺たちはそこから発射装置のある地下室へと下りて、プラチナと話したあの岬をクローズアップした。

 一帯はまだ夜明け前だ。暗いのでこっちも地上の様子を上手く目視出来なかった。


「来るかな……」

「ワカリマセン……。デモ、ニア、ハ来テ欲シイ(`・ω・´)」


 それでも俺たちは画面を見つめてプラチナを待った。

『頼むから来てくれ。その家族の元に残っても、君にろくな未来はない』と、そう俺も心に願う。すると小さな人影が岬に現れた。


 その人影は墓前に花を捧げて、祈って、天空に浮かぶ巨大な陸塊マク・メルを見上げた。もちろんそれはプラチナだった。


「あたし行ってくる! ニアはレグルスを運んで!」

「カシコマリ(^_-)」

「へ……っ? なっ、ちょっ、うぎゃああっっ!?」


 まるでハクセキレイのように、統星は地面を跳ねて地下室を飛び出していった。

 同時にニアの長い腕が俺をつかんで、小脇に抱えて、ダイナミックに走り出す。


 あっという間に地上を出て、ニアの巨体が大地を駆ける。

 プラチナという新しいお客様を招くために、自分がマスターの権限を与えた男を荷物にして、俺の制止や懇願にはまるで耳すら貸さずに、丘上のモニュメントまでニアは走った。


「殺す気かーっ!!」

「スミマセン……役目、嬉シクテ、ツイ……(´・ω・`)」


 あまりの振動と重力に首がもげるかと思った……。


「いや、落ち込むなよ。……帰りはもうちょっとやさしく頼むな……?」

「ハイ、レグルス様! ニア、ガンバリマス!(*´∀`*)」


「そこではがんばらずに、安全運転でお願いします、ニアさん……」


 既にマク・メルは朝だ。

 俺は降下を命じるため、螺旋階段を下ってマク・メルの中枢に飛び込んだ。


 ・移動

 ・現在座標に停泊


『現在の出力では、水没の危険がありますがよろしいですか?』


 コンソールにそんな文字が浮かんだが、もはや俺たちは立ち止まれない。

 『・はい』を選んで俺は螺旋階段を上った。

 大地が揺れて、少し身体が軽くなったような微かな浮遊感を覚えた。


「待たせた、運んでくれ。……やさしく、やさしくな?」

「アラヨッ(`・∀´・)┛」


 地上に戻ると、ニアは俺を肩に乗せて丘を駆け下りた。

 この不便極まりない土地構造、もっとなんとかならないものだろうか……。


 マク・メルの中心核と、マク・メルの終点である崖地まで行き来しなければならないなんて、不便にもほどがある。

 再びマスドライバー発射装置まで戻って来た頃には、度重なる振動で、若干の吐き気を覚えることになったのは言うまでもない……。


「ぁ……天使様……」


 しかしちょうどいいタイミングで戻って来れたようだ。

 画面の向こうの岬には、統星の黒い翼に目をまん丸にしたプラチナの姿があった。


「私、やっぱり天国にいけるんだ……やったぁ……っ」


 プラチナの前に統星が降り立つ。

 プラチナが己を本当の天使だと勘違いしても、統星は誤解を解こうとしなかった。


 天使のふりをすれば、この可哀想な少女をマク・メルに連れて行ける。

 俺が同じ立場ならば嘘を吐くところだった。


「あたしたちの天国には、プラチナちゃんのお母さんはいないけど、いい……?」

「うん、それは昨日、神様が教えてくれたから……。私、もうここで暮らすのは嫌……。だからいいのっ、私を空に連れて行って、お願い、天使様……!」


「わかった。少し怖いかもしれないけど、あそこまであたしがちゃんと運ぶから、暴れちゃダメだよ?」

「いいよ。海に落ちても死んじゃっても、私平気。お母さんのところに行けるから……」


 そんなことを言うと、天使様が泣き出すから止めた方がいいぞ、プラチナ。

 統星は少女を背中から抱き込んで、翼を羽ばたかせてゆっくりと浮上する。


「大丈夫か……? 無理そうなら高度をもう少し下げるぞ?」

「平気っ、マク・メルが沈没したら意味ないでしょ!」

「統星様、ガンバッテ下サイ。統星様ナラ、出来マス!(`・ω・´)」


「ありがと、ニア。うう……でもこんなことなら、もっと飛ぶ練習しておけばよかった……」

「あぅ……重くてごめんなさい、天使様……」


「花園で待ってるよ」


 少し危なっかしいが見たところ大丈夫そうだ。

 そこで俺はニアに励まし役を担当してもらうことにして、もう一度丘の上のモニュメントを目指した。


 ……これ以上ニアに運搬されると、確実に吐いてしまう自信があったからだ。


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