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・プロローグ 幽閉王子の里帰り

 これは後で聞いた話だけど、最初は誰も気に止めなかったらしい。

 空の彼方に小さな暗雲がポツンとあるだけで、それが天駆ける陸塊であるとは、誰だって想像もしていなかった。


 まあそりゃそうだ。大地が空を飛ぶなんて、俺だって先日までは古代人の誇大妄想だと思っていた。ま、古代なだけにな。


 それから半日が過ぎた夜、王都に早馬が飛んで来た。


『緊急報告、王都南部に正体不明の浮遊大陸現る! 弓も射石砲も全く届かず! 巨大な砲門を持つ陸塊が、一直線にこの王都へと向かって来ている! 至急避難されたし!』


 王も王太子も官僚たちもその報告を本気にしなかった。

 翌日の夜明け前、南の空に浮かんだ薄もやの遙か彼方に、陸塊と、その上にそびえる都市の姿を見つけるまではな……。


 少しずつ、少しずつ近付いてくるその正体不明の空中都市は、じわじわと王都の民を大混乱の渦へと叩き込んだ。

 焦れったいほどにゆっくりと飛んで来るものだから、落ち着いて茶も飲めない一日が過ぎ去った。


 その浮遊大陸の名はマク・メル。

 かつて魔大陸と呼ばれ、長らく実在を疑われ続けて来た生ける伝説そのものだ。

 ある学者は言った。


『マク・メルは存在する。我々が信じ続ける限り、あの雲の彼方に必ずマク・メルはあるのだ』と。


 つまりバカにされようとも、夢を信じ続けてきた学者さんの大勝利だ。


 その伝説の魔大陸が、巨大な砲門を下部に装備して、スヴェル王国王都ホワイトパレスに迫って来るなんて、かつてこれほどまでにサービス満点の魔大陸があっただろうか。いや無い。


 まあともあれ、俺は生まれ故郷への里帰りを果たした。

 弟よ、父上よ、ついでに俺を切り捨てた宮廷の連中よ。


 こっちはそんなに恨んじゃいないけど、結構酷い目にも遭ったし、ちょっとくらいお前らを脅かしても罰は当たらない。俺はそう信じた。


 だからこの結果は故意ではない、事故だ。小さな腹いせだ。だから許せ。俺は悪くない。俺は悪くない。


 一発までは、誤射だ。


続きを19時、21時、00時に投稿いたします。

1話平均3000字の予定です。


8話目のざまぁ展開が序盤の売りですので、そこまで読んで切るかどうかを判断していただけたらと思います。

どうかこれから応援して下さい。

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