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これも一つのハッピーエンド

作者: くまごろう

いっけなーい、殺意殺意!私、前世の記憶持ち公爵令嬢でこの国の第二王子の婚約者。相手がどんなにクソ野郎でも貴族の義務は果たさなきゃ…と思っていたらいきなり婚約破棄を告げられてもう大変☆次回、『誰がてめぇなんかに嫉妬なんかするか。浮気野郎なんざこっちから願い下げじゃゴミカス野郎』お楽しみに!







 とか現実逃避してみたけど当然目の前の現実は何一つ変わってくれちゃしない。口元は扇で隠しながら思わず遠い目しちゃう私は悪くない。悪くないったら悪くない。


 今日は学園の卒業パーティで、目の前ではクソやr…ゲフンゲフン。第二王子とその取り巻き一味、それらに守られるようにして小柄な少女が一人。


 ピンクブロンドの髪に水色の瞳、小柄な体格でお胸には夢と欲望が詰まりまくってる性悪ビッチ。その可愛らしい外見と、玄人ですかといいたくなるような手練手管によって異性の関心と庇護欲は余すことなく掻っ攫うけど同性からは蛇蝎のごとく嫌われるタイプ。プルプルウルウルすれば誰かが助けてくれると思ってる脳みそにお花畑が咲いてる系ヒロイン。



 そしておそらく、このヒロインも転生者で前世の記憶持ちだと思う。前に「ここって……の世界?ということは……で…も…とか…ってこと?!」とかなんとかブツブツ独り言呟いてたし。

残念ながら私は前世で乙女ゲームなんかやってなかったけどネット小説は暇な時間に読み漁ってたから彼女が言っている意味をちゃんと正しく理解した。


 …ブツブツ言ってたから8割方聞き取れはしなかったけど。大事なところは全然聞こえてこなかったけど、まぁ察した。



 そう、ここが何らかの乙女ゲームまたはそれっぽいアニメか漫画、それか小説……あやふやだけどいずれかの世界であることを。


 といっても肝心の題名は聞こえなかったし(聞こえたところで多分知らないけど)、自分の立ち位置もよくわからないけど…自称ヒロインちゃんが私の婚約者(とその取り巻き連中)にターゲットを絞ってるのを見るとおそらく私は悪役令嬢的なポジションなんだろう。知らんけど多分きっとメイビー。



 こんな私でも悪役令嬢務まります?って聞きたい。ほんとに私が悪役令嬢なの?

ツリ目でドリルを装備してたり、淑女教育が過ぎて鉄面皮になってたり、家族に甘やかされてワガママレディに育ってたり、傾国の美女または妖艶なボディを装備してるのがテンプレじゃないの??


 垂れ目でふわっふわな天パで、そりゃ公爵家の令嬢として教育はされてるので感情を全部表情に出すなんて馬鹿な真似はしないけど鉄面皮なんて程遠いレベルだし、家族は愛してくれても簡単にワガママ聞いてくれないし(私のワガママなんて街で買い食いがしたいとか馬で遠乗り行きたいとか可愛いものなのに)、国一番の美女というわけでもないし、どちらかといえば幼児体系だし。く、クビレはちゃんとあるもん!!


 …なんか自分で言ってて悲しくなってきたなぁ。



 そんなことをつらつらと考えている間にも目の前のでは


 「お前はこの可憐なソフィアを妬ましく思って…」


 とか


 「ビクトリア様!私、ほんとに怖かったんですけどビクトリア様に謝ってさえいただければ…」


 とか、いかにもテンプレの茶番が繰り広げられている。ついでに私がやったといわれてるイジメ内容に関してもつらつら発表されてるんだけどさ、何一つ覚えがないっつーか実は台本でもあるの?って程テンプレに忠実だしそもそも公爵令嬢である私がそんな庶民じみた嫌がらせするわけがないと気づいてほしい。


 なーにが「可憐なソフィア」よ。お胸の存在感以外は見た目の特徴がかぶりまくってることに気づけない節穴野郎。むしろ可憐なのは私の方だわ(胸が)。




 そもそもやるなら足がつかないよう完全犯罪目指すし。取り巻き使って証拠が残っちゃうようなヘマなんてせず外部組織雇うに決まってるじゃない。


 10歳で前世の記憶を取り戻してからは以前の人格に引っ張られてる節もあって、脳内駄々洩れたらお母さま辺りは卒倒しちゃいそうなレベルでお口悪いけど貴族としての知識とか教養はちゃんと学んでいるのよ。公爵家にたてついて無事でいられると思うなよ。


 あとね、自称ヒロインちゃんよ。私の名前、「ビクトリア」じゃなくて「ヴィクトリア」だかんな。馬鹿っぽいから発音位ちゃんとしたほうがいいと思うよ。



 くだらない茶番劇に付き合ってるせいで軽い頭痛もしてきたしもう帰っていいかな。目の前ではあほ二人が


「可哀そうなソフィア…もう怖い思いなんてさせないよ。僕が守るからね」


 とか


「アレックス様…私、私…ほんとに怖かった…」


とか二人だけの世界に入っちゃってるし。もう私は必要ないでしょ。





「婚約破棄、承りました。彼女…ソフィア様とおっしゃいましたか。彼女に対する諸々に関しては一切覚えがありませんので謝罪は致しかねます。もしどうしても謝罪が必要というのであれば『証言』ではなく確たる『証拠』をお持ちになってくださいませ。

 それからソフィア様、あなたが殿下の寵愛をいただいていようが現時点であなたは男爵令嬢です。公爵家の長女であるわたくしに身に覚えのない罪を『謝罪をすれば許す』などといったお言葉は当家に対する侮辱に当たりますので後日御実家へ抗議させていただきますわ。そもそも許可した覚えもないのに人の名前を勝手に呼ぶどころか発音すらまともにできないなど…貴族庶民関係なく失礼だと思わないのですか。

 あぁ、それと殿下にはこの卒業パーティを台無しにされた代償は取っていただきます。この場で起ったことは全て、包み隠さず、陛下にご報告いたしますので責任逃れなどなさらないようお願い致しますわ。

 皆様、本日はこのような祝いの場を台無しにしてしまい大変申し訳ございませんでした。わたくしはここで失礼いたしますので皆様は心行くまでお楽しみください。」



 反論する隙を与えないように一気に言い終わると同時にカーテシーをし、そのまま騒めくホールを後にした。




 予定よりだいぶ早く出てきた私に戸惑う馭者を何とか宥め邸への道を急いでもらい、やはり早すぎる帰宅に驚く家族へ事情を説明した。元々殿下の素行不良に関してお父様には内密にご相談していたけど、あろうことかこちらに瑕疵など一つもないのに向こうからの破棄である。いくら王家からの打診で成立した婚約とはいえ、こんな屈辱を受けてまで婚約を続けたくない、こっちから願い下げじゃと説得。万が一、陛下がそれでも縛り付けようとするのであれば私は遠慮なく国から出ていくことを伝えた。






 私から話を聞いたお父様はしっかりと事実確認を取った後陛下に奏上し婚約の白紙撤回、そして王家と男爵家から我が家に対する慰謝料をたんまりもぎ取ってきましたとさ。…さすがお父様。さす父。












 さて、その後の話をしましょう。



 殿下は追放こそ免れたものの廃嫡され離宮に幽閉されることが決まった。


 取り巻きの皆さんも騒動の責任を取る形で殿下と同じ離宮に入れられることになった。これさ、多分上の人たちめんどくさくなってまとめて臭いものに蓋した感じだよね?


 ソフィアはまぁなんというかある意味テンプレな感じで、殿下だけでなく取り巻きもみんな揃って大人な関係を持っていたみたい。子を身ごもっている可能性が捨てきれず、しかも誰の子かも断定できない状況で下手に追放もできないということで同じく離宮に幽閉。もし子が生まれたら王家が引き取り、魔力検査が受けられる3歳まで育て、検査の結果をもって(親と違う魔力は現れないため。現代の血液検査と同じ感じ。)どこに養子に出すか決めるそうだ。子どもに罪はないんだし幸せになれるといいね。


 幽閉された時点で殿下と取り巻き連中、ソフィアには子ができないよう処置をされるそうだから何の心配もなくやりたい放題できるわけだし、恐らくこれから公の場に出ることは叶わずともみんな一緒なんだからある意味幸せなんじゃないかな。監視の目はあれど、ある意味楽園じゃない?あ、もしかしてこれが逆ハーエンドってやつ?(多分違う)







 私はといえば、それまでしてきた王子妃教育を無駄にするのはもったいないということで少々年上だけど30歳目前にしていまだに独身を貫いていた王弟殿下の婚約者になることが決まった。王族としては異例の速さとなるけど半年の婚約期間を置いた後、婚姻となる。

 一瞬王太子の婚約者にって話も出たみたいだけど彼には相思相愛の婚約者がすでにいるもんで。私も彼女と一緒に教育受けてて仲がいいことから、これ以上人間関係が複雑になるのはよろしくない…ということで却下されたらしい。


 当り前だよ!一瞬とはいえ候補に出した人間馬鹿なんじゃないの!?





 自称ヒロインちゃんは愛する人と一生一緒にいられるわけだし、私も国外追放とか家に勘当されて平民落ちとかされていないし。何なら年上の王弟殿下、物凄いタイプで幸せの絶頂といっていい。

 まぁある意味みんなハッピーエンドを迎えられてめでたしめでたしって感じかしら。自称ヒロインちゃんの思い描いたハッピーエンドとは異なるエンドかも知れないけども。




















 …つーかさ?ぶっちゃけるとアレよね?








 逆ハーとかよく聞くけどぶっちゃけそれ、オタサーの姫と何が違うの?(暴言)







 いや、本来のヒロインなら違うんだろうけど。


 そもそも奴らがオタクってわけではないんだけど、みんな幼少のころから婚約者がいる上に主(第二王子)に似たやつばっか集まるのかヘタレばっかりだから婚約者以外の女性に免疫なかったりするわけだし、貴族として当然初夜までベッドを共にすることもないわけで。紳士淑女たれ…という教えに従い触れ合うのはエスコートの時のみ、しかもお互い手袋の上からしか触れないから肌に触れることも、触れられることもないわけだ。


 そんなやつらの女性に対する免疫って、前世の非モテオタクと変わらなくない?(暴言パート2)


 閨の勉強はするのかもしれないけど、それってつまり素人〇貞ってことでしょ?(暴言パート3)






 そんなところに小柄でボインな可愛らしい女の子が積極的に距離縮めてきて「私だけはあなたの事わかってるよ」とか囁かれて腕にギュッとお胸を押し付けられたり、ボディタッチ多めのスキンシップを取られたら瞬殺だと思うのよねぇ。





 でもさ、私は乙女ゲーしたことないから詳しいことはわかんないけど数々の小説とか読む限りさ。


 ヒロインがみんなに愛されるのって、ヒロインの庶民思考が珍しいのと、貴族子女にはない素直に感情を表すところだったり、純真な心に真実の愛(笑)とやらを見出すのでしょ?



 それがさ、「私がヒロイン…?じゃぁここは私のためにある世界なのね。攻略対象はみーんな私のもの!」なんて自分勝手な思考を持った時点でヒロイン失格じゃない?


 なんかある度に心の中で「私のために争わないでぇ!ニヤニヤ」とか思ってそうだし(実際何度か顔に出てたこともあるし)。自分の都合の悪い時には「みんな平等だよ!」とかほざきつつ、クラスの人間に対しては攻略対象たちのこと後ろ盾にして結構な態度だったからな。自分は未来の王子妃だから…ってすげぇ尊大な態度取ってたからな。男女問わずクラスの平民層には相当恨み買ってたと思うよあれは。本当のヒロインならクラスメイト相手でも平等な態度取るんじゃないの?そんでみんなに好かれてるはずでしょ。



上辺だけうまいこと取り繕ったところで一時の寵愛は得られても一生は無理よねぇ…。そのうち逆ハーメンバーが泥沼の争い起こして腹でも刺されて死ぬんじゃないかしら。そうしたら楽園のごとき離宮内が一気に地獄になるわねぇ。あ、もしかしてそうなったらそれがバッドエンド?それともメリバになるのかしら…。


取り巻き連中の中には明らかにヤンデレ予備軍みたいなのもいたし…。実は結構やべぇのでは?と思ってる。




頑張れ自称ヒロインちゃん!君の明日は明るいぞ!!!(多分)









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