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スマホの中には魔女がいる  作者: 一宮 千秋
第一章 出会い編
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第9話 ファミレスにて

 僕たちは近くにあったファミレスで話をする事になった。僕の前に男子生徒が座っているのは分かるが、なぜ神前は僕の隣に座っているのだろう。


「あなたたちが対面したら私はどちらかの隣に座るしかないじゃない。仕方がなくよ」


 男子生徒が座る前に僕の隣に座って来たのは勘違いだろうか。あまり言うとまた反撃が来るので何も言わず大人しくしておく事にするが。


「ボクは一年D組の串間(くしま) 淳一郎(じゅんいちろう)って言います。神前さんに助けてもらって嬉しいです」


 うん。助けたのは僕なんだけどね。完全に串間の記憶が書き換わっている。まあ、助けた事を恩に着せる気もないから良いんだけどね。

 それよりも気になるのはスマホの中にいる魔女だ。単刀直入に串間にスマホを見せてと頼んだけど、僕の声が聞こえないのか全く見せようとしてくれない。

 まあ、あんまり自分のスマホを他人に見せたいとは思わないよな。


「串間君、お願いだからスマホを見せてくれないかな?」


 神前に頼んでもらうと串間はしっかりと聞こえたようで、すんなりスマホを見せてくれた。何て分かりやすい奴なんだ。

 兎にも角にもスマホを見せてもらえたので魔女が本当にいるのか確認する。神前と一緒にスマホを覗くと魔女はスマホの中で何をするでもなく、横になって寝て居た。

 何てだらけた魔女だと思いつつも名前を聞いてみた。


「なんでアタシが名前を教えなきゃいけないんだい? 面倒臭い」


 魔女って言うのは変な奴しかいないのか?


「その変な奴の中に私は当然入ってないでしょうね? 私は魔女業界一可愛いくて、魔女の中でも一番の常識人ですもの」


 僕の中ではフォルテュナが一番変な奴なのだが、それは口が裂けても言えない。

 まずはこのだらけた魔女とコミュニケーションを取らなければいけないと思い、寝返りを打って後ろを向いてしまった魔女をスマホをスライドさせ、ひっくり返すようにこちらに向ける。


「何をするんだ? 必死になって寝返りを打ったって言うのに元に戻ったじゃないか。面倒臭い」


 必死って……寝返りを打っただけだろ。見た目はウエーブのかかった青い髪をしている綺麗な魔女なのだが、エヴァレットとは違った意味でコミュニケーションを取りにくい魔女だ。

 取り敢えず名前だけでも教えて欲しい。後の話は串間にでも聞くから。


「はぁ、面倒臭いわね。イリーナよ。これで良い? 面倒臭い」


 イリーナか。それにしてもイリーナは面倒臭いって言うのが口癖なのか?


「何よ。名前だけじゃなかったのかい? 面倒臭い。面倒臭いついでに背中を掻いてくれないか?」


 イリーナはまた寝返りを打って僕に背中を見せてきた。背中がぱっくりと空いたドレスからは綺麗な背中が見えるが、下着は着けていないんだろうか。


「着けてない訳ないじゃない。ドレスの所にワイヤーがあるタイプかヌーブラをしてるんじゃない?」


 流石は神前良く知っていらっしゃる。まあ、いくら何でも下着をつけてないなんて事はないな。


「下着なんて着けてないわよ。面倒臭い。あぁ、一生汚れなくて着替える必要のない服ってない物かしら。面倒臭い」


 ん? スマホの中にいるんだから汚れる事もないだろうし、着替えなくても良いんじゃないのか?


「そうなのかい? やけに詳しいじゃない。それよりも早く背中を掻いてくれないか? 面倒臭い」


 口癖なんだろうけど、語尾が気になるな。「面倒臭い」を付けずに話せない物だろうか。それでも僕は大人しく従い、背中の辺りを押してスマホを擦る。


「あぁー。気持ち良いわねぇー。そこよ、そこ。顔に似合わずテクニシャンなのね」


 語尾に「面倒臭い」が付いていない。気分が良いと付かないのだろうか。それよりもテクニシャンとか言うのは止めてくれ、神前が冷めた目で僕を見て来てるではないか。


「私はテクニシャンって所に反応した訳じゃないわよ。ただ、普通に女性の背中を掻いている行動に引いているだけ」


 そうなの? 背中を掻いてくれって言われたから掻いただけなのに。


「初めて会った人。しかも魔女よ。だからエヴァレットにスクール水着なんてプレゼントするのよ」


 いや、今はスクール水着は関係ないじゃないか。いきなり変な事を言うなよ。僕の人格が疑われてしまうではないか。


「スクール水着か。涼しくて良さそうね。アタシにもプレゼントしなさいよ。面倒臭い」


 面倒臭いしお金を使うのは僕の方なんだけど。そんなに欲しいならエヴァレットから貰ってくれ。

 あれ? 神前が僕の座っている場所から距離を置き始めた。何か拙い事でも言ったのか?


「使用済みのスクール水着をプレゼントってどんな神経してるのよ。考えられないわ」


 現実に考えればありえない事だろうけど、アプリのアイテムだよね? それでも駄目なのか?


「その発想に至る所がもうおかしいのよ。あっ、私には近づかないでね。欲求不満が移るから」


 移るかそんなもん。駄目だ。こんな事をしていたら何時まで経っても話が進まない。


 スマホを串間に返し、魔女がスマホにいるようになった経緯を聞く事にする。だが、串間は僕の質問には無視を決め込んでいるようだ。


「串間君はどうやってこの魔女を手に入れたの?」


「友達に言われてアプリをインストールしたらいつの間にか居ました。ってこの女性は魔女なの?」


 僕の質問は無視して神前の質問には答えるのか。面倒臭い。

 おっと、僕までイリーナの口癖が移ってしまった。気を付けなければ。

 まあ、それなら串間との会話は神前に任せてしまおう。


「魔女って知らなかったの? イリーナは教えてくれなかったの?」


「面倒臭いって言って教えてくれなかったんだ。じゃあ、ボクもこいつみたいに何か魔法が使えるって事?」


 おっ! やっと僕の事を認識したな。でもこいつって言われると何かカチンとくるな。


「使えると思うけど、私も使った事がないから分からないわ。それよりも串間君の他に魔女を持っている人って知ってる?」


「知らないなぁ。他の人のスマホなんて注意して見ないし」


 他に魔女を持っている人は知らないか。そこまで期待していた訳じゃないから知らなくても仕方がないな。

 どうするかな。僕たちの他にも魔女を持っている人はまだ居そうだけど、学校の生徒のスマホを一人一人見て回る訳にもいかないしな。


「だったらサーバーを調べてみれば良いんじゃない? 神前さんもそう思うでしょ?」


「サーバーが調べられるんだったら履歴をみたらダウンロードした人が誰かとか分かるかもしれないわね」


 それができれば最高だが、僕は学校のサーバーなんて触った事がない。


「サーバーなんて学校の先生が管理してる物だからボクなら簡単にアクセスできるよ」


 なんと! 串間はそんな事ができるのか。それならサーバーにアクセスして調べてもらいたいのだが、当然、僕が言っても聞いてくれないんだろうな。

 神前に目配せをすると、神前はどこか疲れたように息を吐いた。


「ねぇ、串間君。学校のサーバーを見てみたいんだけど、お願いできるかしら?」


「喜んで!!」


 串間は神前のお願いに二つ返事でOKしてくれた。本当に神前の言う事はよく聞くな。僕としても有難いから良いんだけど。


「じゃあ、どうしましょ? 今からでも学校に行って調べてみる?」


 時間は夕方ぐらいなので、まだ家に帰らなくても大丈夫だ。それなら串間がいる間に調べてしまった方が良い。

 僕たちはファミレスから出て、学校に向かう事にした。


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