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スマホの中には魔女がいる  作者: 一宮 千秋
第一章 出会い編
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第13話 寝る前に

 家に帰ってきた僕はお風呂から上がるとベッドに寝転がる。

 神前が魔女を持っていたのも驚きだが、串間まで魔女を持っていたとはな。こうなると他にも魔女を持っている人がいると思った方が良いだろう。

 それにしても串間の魔女はかなり変わっていたな。仲良くなればちゃんと言う事を聞いてくれるかもしれないけど、そこまで行くのが大変そうだ。


「そう言う意味で言うとコーリンは私みたいな魔女業界一可愛い魔女でラッキーだったわよね。性格も良いし、可愛いしで言う事なしね」


 良く自分からそんな事言えるな。最初スマホを操作しても画面に全然姿を現さなかったのに。


「それはそうでしょ。いきなり生き返ったと思ったら強制的に引っ張られる感じがしたんだもの。それは抵抗するってものよ」


 そう言えばフォルテュナはスマホの中に現れる前は何処にいたんだ? 待機場所みたいな所があって連れて来られたのか?


「イメージ的にはそんな感じね。こっちの世界にいない時は誰も居ない真っ暗な所でずっと待っているのよ」


 真っ黒な所? 電気の付いていない待合室みたいな所か?


「そんな所かしら。でも、部屋とは違って壁なんてないし、どこまでも続いている所だから宇宙に放り出された感じの方が近いかしら」


 宇宙に放り出された事がないのでそう言われてもイマイチ実感がわかないが、それって辛くないのか?

 話し相手も居ない、やる事がない場所にずっといるなんて。


「そうね。でも意外と平気よ。こっちの世界では百年とか経っていたとしてもその場所では数分って感じだから」


 その場所で流れている時間と僕がいるこの世界の時間の流れの速さが違うのか。

 でも、一瞬にして百歳近くも年を取るなんてちょっと嫌だな。


「それよりもコーリンは礼華の告白に対してなんて返事をする気? そのまま放置って事はないわよね?」


 ん? あんなのは神前が串間から逃げるために咄嗟に出た嘘だろ? だったら返事をするとかっておかしくないか?


「はぁ。これだから鈍い男って言うのは……。良い? 女性がそう言う事言うのは本気の時よ。嘘でそんな事言ったりしないわ」


 そうなの? うーん。いきなり言われてもなぁ。確かに神前は学校でも人気があって可愛いと思うけど、本当に僕の事が好きだと思って言ったとは思えないんだよなぁ。

 だって神前と話し始めて数日だよ。そんなすぐに人を好きになる物なのかねぇ。


「人を好きになるのに時間は関係ないわよ。徐々に好きになっていくってのも否定はしないけど、第一印象で駄目な人は何処まで行っても駄目だからね」


 言ってる事は分かる気がするなぁ。僕も友達が少ないのは第一印象で決めてしまう事が多いからなぁ。


「凛兄。起きてる? ちょっと聞きたい事があるんだけど」


 部屋のドアが急に開いたと思ったら妹が僕の部屋に入ってきた。

 おいおい、妹よ。何度も言っているだろ。僕の部屋に入って来る時はノックぐらいしろと。


「別に良いじゃない。兄妹何だから。それとも何? 千景に言えない事でもやっているの?」


 馬鹿な事を。妹に言えない事をやっている訳ないじゃないか。兄を何だと思ってるんだ。


「そう言うのはちゃんと千景の目を見て言ってくれない? 全然信用できないんだけど」


 それは僕に対する信仰心が足りないからだ。ちゃんと兄として敬ってくれれば僕ほど信頼できる兄はいないぞ。


「へぇー。良くそんな事が言えるわね。私はちゃんと知ってるんだからね」


 さて、そんな事よりも聞きたい事って何だ? お兄ちゃんが聞いてあげよう。


「そうそう、聞いてよ。凛兄は魔女育成アプリって知ってる?」


 魔女育成アプリだと? なんで千景がアプリの事を知っているんだ? 中学生で学校も違うからアプリの事は知らないと思ってたんだけど。


「あっ。やっぱり知ってるんだ。これって凛兄の学校の人が作ったアプリなんでしょ? 何かうまく動かないから見て欲しいんだけど」


 思わずベッドから起き上がり、千景のスマホを取り上げて画面を見た。

 もしかして千景のスマホにも魔女がいるのかと思ったが、見た感じ魔女の姿は見えずホッとする。


「何するのよ! いくら兄妹だからって勝手に人のスマホを見るなんてルール違反よ!」


 僕から奪い返したスマホを隠すようにそう言ってくるが、それを言うならノックをせずに部屋に入って来るのもルール違反だろ。


「それとこれとは話が別よ。可愛い妹が部屋にまで来てあげてるのよ。ノック何て些細な事を気にする方がおかしいのよ」


 いや、いや、僕からしてみればノックをしない方の方が重大なルール違反なんだけど。

 それに千景は自分の事を可愛いと言っちゃうようになったのか? なんだかフォルテュナみたいだな。


「誰よ。ふぉ、フォルテュナって? 凛兄に友達なんている訳ないし、外国の女優さん?」


 おい、妹よ。僕に友達がいないなんて合ってるけど直接言うもんじゃないぞ。落ち込んでしまうではないか。


「凛兄に友達が居ないのなんて昔からだもん。今更新しい友達ができるなんて思わないわ。それで? フォルテュナって誰?」


 ん? あぁ、そうそう。外国の女優さん。最近ちょっと海外のドラマに嵌っていてな。

 危ない、危ない。思わずフォルテュナの名前を出してしまったが何とか誤魔化せたような気がする。

 兄のスマホの中に魔女がいるなんて言ったら頭がおかしくなったと思われてしまう所だった。

 千景の視線が明らかに僕の話を信用していない感じだが、僕はそれを無視する。それで? 千景は何しに僕の部屋に来たんだっけ?


「もう良いわよ! 凛兄に聞いた私が馬鹿だったわ。凛兄は外国の女優さんを見てせいぜい精を出しておけばいいのよ」


 うぉい! その言い方は何かいやらしい事をしているように聞こえるじゃないか。

 と文句を言おうとしたが、千景はドアを思いっきり閉めて自分の部屋に戻って行ってしまった。

 全く何て妹だ。お兄ちゃんはお前の将来が心配だぞ。


「あの子の将来よりコーリンの将来の方がよっぽど心配に値するけどね」


 ん? 何か言ったか?


「いいえ、何でもないわ。それよりもやっぱり学校の関係者以外にもアプリは広まっていたのね」


 あぁ。その可能性はサーバーを見た時に串間が言っていたんだけど、まさか妹の学校にまで広がっているとは思わなかった。


「でも惜しいなぁ。妹ちゃんも魔女を持っていれば一緒に遊べたのに」


 馬鹿な事を言うな。これ以上魔女がいたら……。

 もしあの時、千景のスマホの中に魔女がいたら僕はどうしていたんだろう。

 アプリを削除していたんだろうか? でも、それって僕自身魔女を危険だと思っている証だ。

 もっと言ってしまえば僕はこの世界に魔女がいてはいけないと思っているのと同義だ。

 分からない。僕はフォルテュナがスマホの中にいるのは何とも思ってないのだが、他の人が魔女を持っているのは駄目だと思っているのだろうか。

 それなら神前が魔女を持っている事はどうなんだ。分からない。本当に分からない。


「そんなの悩んでも仕方ないわよ。魔女が現れる時は何もしなくても現れるし、消さなきゃいけなくなったら誰かが消すわよ」


 そう……なんだろうか。でも、ここで答えが出ないって事はフォルテュナの言う通り悩んでいても仕方がないんだろうな。

 僕は部屋の電気を消すとベッドの上に転がる。そう言えば明日、神前が喫茶店で話をしようって言っていたな。

 そんな事を考えながら僕は眠りについた。


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