オリエンテーション①-4 講師室に向かう廊下
私は、講師室に向かう廊下へと早足で歩いて行く。
「ここまでの、コウお嬢様へのお心遣い、ありがとうございます。」
けっこうなご年配ながら、私の早足に静かについてきてくれていたらしい、山田さんが、そう言ってくれた。今は一人暮らしをしている、Tさんと依代の礼文コウのことを、永らく見守ってくれていた、礼文家の元執事である。
「こちらこそ、さまざまなご助力ありがとうございます。」
と、歩を少し緩ませつつも、私は前を向いたまま歩み続けた。
小休憩時間の目的地となる講師室の前には、オリエンテーションの方の司会進行を引き継いでくれる、私のチームのスタッフ前山美佳ちゃんと、Tさんの中の異世界姫君になぜかいまだに忠誠を誓ってくれている、礼文家における、山田さんの元部下、メイドのイープさんが講師室のドアのそれぞれ左と右に佇んでくれていた。
「ミカ師、イープさん、お出迎え、ありがとー。」
私は眼力を取り戻しながら、そう言った。そして、後は任せてね、という頷きを見せてくれたミカちゃんを軽くハグした。
ここから先はチーム戦。これから文字通りオン・ステージのミカちゃんに、それ以上の言葉をかけることもなく何らの所作も行うことなく、私は、山田さん、イープさんと共に、大講義室へと向かうミカちゃんを見送った。
私とドアを開け、かつての腐女子仲間たちまでもが待ち受ける講師室へとひとまず入っていった。