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オリエンテーション③ 作業療法士・仁宮院マサト(兼eスポーツゲームプロデューサー)と愉快な腐女子たち

 バイオリンの演奏が続く中、扉が開き、白衣のスタッフたちが次々と入ってくる。踊るUさんのホログラフィを邪魔しないように半円形の形にスタッフは並んだ。

 

 前半の講義を担当したサイトウの隣に立った女性がマイクを手に、

 「リアリテス治験のコーディネーター、いわゆるCRCをしております、スルガと申します。薬剤師の免許も持ってまして、リアリテスの治験参加者の投薬歴などのまとめもしています。」

と、自己紹介をした。


 「横に立っていますサイトウ先生のお願いを受け、今日の私の役割は、仁宮院じんぐういん先生のご紹介となります。ぁ、テレビの特番スタッフの皆さん、地上波向き出ないところがあったら、カットしてくださいね。」

 と笑う。

 そして、講義室の時計をみやると、

 「随分と、ミカさんとミコットちゃんスタッフの皆さんが頑張ってくれたみたいで、午前の予定時間の12時を過ぎてしまってますね。このバイオリンの演奏が終わったら、いったん、休憩といたしましょう。ここにいるイケメン、仁宮院じんぐういん君の事は、TVカメラの方に紹介しておきますので、後で特番の方をチェックしてくださいね。あ、もちろん、仁宮院じんぐういん君の事がとっても気になる女子は、講義室に残っていても構いませんからね~。」

 と、スルガが、サイトウとミカに代わって場を仕切るうちに、バイオリンによる異世界アニメテーマ曲の演奏は終わった。

 

 男子たちのほぼ全員は、ピンクのカツラにメイド服姿のあおいの方を、チラ見しながら、講義室を出ていった。医療系の多い女子の方は、後ろ髪を惹かれるように水色のカツラの仁宮院じんぐういんの方をチラ見したりしながらも講義室を出ていったが半数強。少数ながら、あおいの方に熱い視線を送る女子もいる。

 

 ☆

 

 その間に、話しにくいからと、テレビ局の特番カメラスタッフたちを下の方に降りてこらせたスルガは、マイクを片手に話を続けた。

 

 曰く、演奏を終え、水色のカツラを取った仁宮院じんぐういん先生は、和歌山県出身。都内の私大のリハビリテーション科で作業療法士を目指した学生時代には、実習の合間をぬって、学費と生活費稼ぎのため、銀座のホストクラブでアルバイトをはじめた。イケメンである上に、元々がマメな性格ながら負けず嫌いなこともあり、作業療法士の国家試験を受ける頃には、お店のナンバーワンを取るまでに至っていた、と。

 

 さすがに、卒業して、二女医病院での採用が決まる頃には、ホストの方は卒業しようとした仁宮院じんぐういん先生だったが、彼のホスタビリティに惚れ込んだ店長が、知人の銀座のおねえさんのお店の常連さんであった、二女医病院の綾瀬院長と渡りをつけ、はじめの2年は非常勤の作業療法士扱いのままとして、ホストクラブの方も兼任としたのだという。

 テレビの地上波向きかどうか怪しい話となってきたと感じたスルガは、ここで話を締めることにした。最後まで残っていた、すでに仁宮院じんぐういんシンパらしい女子学生たちと、その横でお弁当を広げている自炊お弁当男女の方に向かって、

 「ちなみに、ホストとOT(作業療法士の略称)をかけた院内での渾名あだなは、ホスッオトまたはホス夫君おくんだそうです。こんなイケメンをホス呼ばわりはどうかと思いますが、まぁ、女子的には、こんな夫がいたら夢が広がりますよね。そんなホス夫君おくんに、リアリテスの治験支援をしてもらったUさん、そりゃあ、孫みたいな王子様のためにもうひと頑張りしようか、という気になっても仕方がないですよね。」

 と言い、後はテレビ局スタッフの編集に任せるとばかりに話を終えた。

 

 ☆

 

 午後1時の講義再開まで残り25分ほどの束の間の昼休み。リアリテスの治験・講義担当スタッフたちは、そのまま講義室で新人さんたちが買ってきてくれたお弁当をかきこみながら、短い女子会トークを繰り広げた。理工学部男子の大多数が講義室を去った中、男女比2:8となった学生たちを含めると、講義室の男女比は男子3、女子7の比率だったのである。

 

 リアリテス治験の大ボス、リハビリテーション科の大ベテラン整形外科医の上山かみやま先生が、にこやかにお弁当を食べる中、一番口数が多かったのは、治験の中ボス、腐女子精神科医サイトウのところの医療チームと、サイトウの中高時代の同級生でもあるスルガ治験コーディネーターのところであった。

 

 腐女子サイトウとなぜだか、艶女医会えんじょいかいなるバンドルネームで、剣姫や美男子剣士が出てくるダンジョン関係のゲーム攻略に勤しんでいるというスルガがマイクを握った勢いのままに場の概ねを仕切っていた。当然ながら昼食中のスタッフの様子のTVカメラに収められることはなかったが、本日はテレビ局のスタッフにも開放されていた講義室のモニターマイクの拾うところとなり、回り回って週刊誌のネタを提供することになるのだった。

 曰く、サイトウが話した、バブル時代に医学生世代を過ごした整形外科畑の綾瀬院長のこと。有名医大の学生をしながらBurning Loveを歌うアイドルの追っかけをしており、本当に70年以上お金や生活に困ったことがなく、今の落ち着いたたたずまいとは異なりガードが甘いこと。

 曰く、スルガが「サイトウ、最低だな。」と、ときおりツッコミを入れながら、話した中ボス精神科医サイトウの最低腐女子エピソードなど。

 

 サイトウ一派の看護師、臨床心理士たちにとっては、半ばおなじみの話題ではあったが、メディアはそうではなかった。時折り、「あら、仁宮院じんぐういん君、午後から講義なのに気が効くわね。」などという年上おねえさんの嬌声を聞きながら、テレビ局に同行していたwebメディア関係者は、こっそり小ネタを仕入れていたのである。

 

 ☆

 

 短い、昼休みが終わり、学生たちが戻ってきた。

 

 午後の主役は、昼下がりの学生たちの眠気を奪いかねない現役イケメンの仁宮院じんぐういんマサト先生と、現役美女の牧野葵まきおあおい先生のターンだ。

 

 テレビ局のカメラが準備を終え、午前にやる予定だったスタッフの集合写真を取り終えた。上山先生が率いるリハビリテーション科チーム、サイトウ先生が率いる精神科チームが大講義室を出たことを確認したたところで、作業療法士の仁宮院じんぐういん先生がマイクを握った。

 

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