第1話-9
虹色の光が消える。正殿の大広間にテレポートしてきた。
「アカネさんと決闘してみて、どうだったっすか?」
だからなんでヒバリは順応が早いんだ?あたしは虹色の光に目眩を起こしそうなんだが。
「ヒバリはもう慣れたっすよ」
慣れるの早すぎるだろ。
それで、サクラの感想は、
「えっと……やっぱり私って、規格外なんだなって……」
「規格外っていうか、謎っすよね。本当に8級落ちたっすか?」
「8級落ちたのは本当だけど……私、なんで魔法使えるんだろう……?昨日まで全然駄目だったのに……」
「それは永遠の謎っすよね」
ヒバリ、完全に打ち解けてる。
「コミュニケーション能力には絶対の自信がありますからね。中卒決闘バカのアカネさんと違って」
決闘バカって言うな。あとアカネさんは高卒です。
でも確かに、あたしよりヒバリの方が、初対面の人と打ち解けるのは早い気がする。
「そこで、1つ提案なんすけど、もしよかったら、女王様になりませんか?」
「ほえ?」
サクラが変な声を上げる。あたしも「ほえ?」だな。
8級落ちたやつが、女王様?
「8級落ちたって言ってますけど、さっきの決闘の様子見てたら、絶対2級の実力あると思うっすよ。もしかしたら前人未踏の1級取れるかもしれないっす」
魔法検定1級。
今まで誰も成し得なかった、前人未踏の領域。
それを、サクラが取れるかもしれない。
「カエデ様は3属性で2級が条件って言ってたっすけど、サクラさんは条件満たしてるってことで、いいっすか?」
一応8級不合格なんだが……確かに決闘してみた感覚だと、2級相当の実力って言われてもおかしくない。
「あの……女王様って、何をすれば……」
そうか。女王様の説明してなかったか。
女王様は、ハコザキ王国のトップ。国民の憧れとして君臨するのが仕事。
「一応政治のトップで、法律を作ったり予算を組んだりとかもあるっすけど、カエデ様になってからはほとんど内務省とかがやってるっすよね」
カエデ様が実行した王宮改革で、政治の仕組みが大きく変わった。名目上は女王様がトップなんだが、実質的には内務大臣が色々細かいことをやって、女王様はサインするだけ、っていう感じになったんだ。
「その内務大臣が中卒のアカネさんなんで、結構面倒臭いことになってるっすけど」
アカネさんは高卒です。
「えっと……じゃあ結局、女王様っていうのは……」
強い魔法を使って、国民の憧れとして君臨する。実質的に、それが唯一の仕事。
「他の国と戦ったり、魔王倒したりは……」
「サクラさん、映画の見すぎっすね」
映画とかだと、他の国と戦争して女王様が前線に出たり、悪い魔王と戦って倒したりとかが多いんだが、現実のハコザキ王国は平和そのもの。戦争も長いことしてないし、魔王なんてのはそもそもフィクションだ。
「っていうことを、中卒のアカネさんは内務大臣になるまで知らなかったんですけどね」
アカネさんは高卒です。
まあとにかく。
サクラは確か、高校卒業して、大学にも就職にも落ちて、孤児院も追い出されて身寄りがないってことだったよな?
「はい……」
じゃあ、女王様になってくれたら、衣食住は保証する。
「アカネさんも乗り気になってきたっすか?」
それは、あんな魔法見せ付けられたら、女王様になってくれてもいいかなって思うだろ?
サクラの答えは。
「えっと……その……女王様、やらせてもらえませんか?」
「よろしくお願いします!」
やっぱり、順応が早いのはヒバリだった。