第1話-8
まあいいや、とりあえず始めようか。
アカネ・コヒナタ対サクラ・シロカネ、時間無制限の一本勝負。審判はヒバリ。
「構えて」
それぞれのコートに入って、あたしは杖を構える。サクラは特に何もしない。
「始め」
あたしの体が、後方に吹っ飛んだ。
「それまで!勝者、サクラさん!」
えっと、とりあえず状況を整理させてくれ。
ヒバリが試合開始の合図をした。
あたしの体が吹っ飛んだ。
サクラ、何をしたんだ?
「えっと……重力操作魔法?」
重力操作魔法?そんな魔法聞いたことないぞ?
サクラ、もう1回やらないか?場外に出すのなしで。
「一本勝負って言ったじゃないっすか」
ヒバリがなんか愚痴を漏らしているが、
「分かりました……」
よし、2本目開始だな。
「始め」
あたしは意識を失った。
「アカネさん!大丈夫っすか?」
あ……えっと……ヒバリ?何が起こったんだ?
「とりあえず気絶させる魔法を掛けてみました……」
サクラの説明も、よく分からない。回復魔法なのか精神魔法なのかも分からない。
「回復魔法って言いますけど、効果を逆にして毒を与えたりはあるっすからね」
3本目。ハンデください。
最初の30秒、あたしに攻撃させてくれ。
「分かりました……」
「構えて」
とっておきの魔法を与えてやろう。
「始め」
ファイヤーストーム!
サクラの体が、特大の炎に包まれる。
全神経を集中して、魔力を注ぎ込む。
「30秒経過」
なんでこいつは平気なんだ?
火魔法準2級のあたしの魔法を受けて、全然倒れる気配がないんだが。
「もう……いいですか……?」
サクラがそう言うと、次の瞬間、サクラを包んでいた火が消えた。
あたしの魔法が、サクラに解かれた?
中学の時から魔法決闘やってるけど、こんなのは初めてだ。
「じゃあ……私からも攻撃します……」
あたしの足元に、虹色の魔法陣が出現した。
下半身が虹色に輝いて……魔法陣に吸い込まれる!?
「サクラさん!」
ヒバリがサクラを止めようとするが、サクラの魔法は止まることはなく……。
「アカネさん、私の勝ちですね」
気が付くとあたしは、コート上に立っていた。
ちょっと待って、魔法陣に吸い込まれたはずじゃなかったか?
「吸い込んだんですけど、元に戻しておきました」
というか、あの魔法陣は何だったんだ?
「うーん……魔法陣は魔法陣ですよね……」
サクラにも分からないのか。
自分でもよく分からない魔法を使うサクラ。完全に規格外というか、何と言うか。
「とりあえず、サクラさんが特別な魔法使いだってことは分かったっすね」
何回でも言うが、ヒバリは順応が早すぎる。