第1話-7
「サクラさんがどのくらい魔法が使えるのか知りたいんで、アカネさんと魔法決闘しませんか?」
ヒバリが変なことを言い出した。
魔法決闘は、ハコザキ王国で一番メジャーなスポーツ。ルールは分かるよな?
「長方形のコートの左右に分かれて魔法を打ち合って、先に倒れた方が負け……ですよね……?」
大体合ってるな。先に魔力切れになるか、場外に出たら負け。
「あ、場外でもいいんですか……」
まあ8割は降参、2割は魔力切れで決着するからな。場外で決まるのはほとんどない。風魔法のプロフェッショナルが相当強い風を出して、やっと場外に出せるかってくらいだ。
一応言っとくけど、あたし、高校時代に3連覇してるからな。それで王宮に入れてもらえたっていう感じだから。
「王宮に入ってからも、シニアの大会で6連覇っすからね」
「そう……なんだ……勝てるかな?」
はっきり言うけど、絶対あたしが勝つ。
「はっきり言いますけど、100%サクラさんが勝つと思うっす」
だからヒバリは順応が早すぎないか?
「えっと……頑張ります……」
噴水広場の近くに作られた公設決闘コートに移動
愛用の杖を構えて……と思ったら、杖がない。大広間で作戦会議したときに置いてきたのかな。急いで取ってくる。
「サクラさんの魔法でテレポートできないっすか?」
「やってみます……」
サクラが右手を広げる。虹色の光が生まれ、次の瞬間には杖が握られていた。
「できました……」
ちょっと待て。
何が起こ「もういいっすよ!」
とりあえずサクラがテレポートさせた杖を受け取る。間違いなく、あたしが使ってる杖だった。
そういえば、サクラは杖とか持ってるのか?
「持ってませんけど……」
魔法を使うのに必要なものが2つある。杖や指輪などの魔力制御装置と、呪文を唱えること。
「魔力制御装置っていうのは、自分の体の中にある魔力を増幅して制御して、思い通りの場所に飛ばすための魔法具っすね。1番人気が杖で、2番目が指輪って聞いたっすよ」
ちなみにあたしは杖派。今使ってる杖は、高校の大会で3連覇した時に賞品でもらったものだ。
「ヒバリは指輪っす。大学卒業記念に買ってもらったっす」
サクラは?
「えっと、杖も指輪も持ってないです……」
ヒバリの指輪、貸してやろうか?
「何もなくてもできそうな気がしてるので……」
なんだその絶対的な自信は。