第1話-6
「他にどんな魔法が使えるっすかね?」
ヒバリ、順応が早すぎないか?あたしはこの状況がまだ受け入れられないんだが。
「試しに、天井のシャンデリアを消してみてください」
「やってみます……」
大広間の天井にある、大きなシャンデリア。蝋燭がたくさん付いていて(何本か数えたことはないけど)、当たり前だけど火が灯されている。
この蝋燭は、実は魔法具なんだ。製造時に火魔法が組み込まれていて、魔力を流し込むと、誰でも火が付けたり消したりできる。普通の蝋燭と違って、燃え尽きたり風で消えたりしないんだ。
普通に魔法で火を出そうとすると、ずっと魔力を使い続けないといけないんだ。大きい火を出したり、たくさんの蝋燭を灯したりするには、たくさん魔力を使わなきゃいけないし、制御するのも難しい。
魔法具は、少しの魔力で使えて、制御するのも簡単。ものによっては8級や7級の子供でも使えるんだ。この国ではいろんな種類の魔法具が作られて、専門店で売られている。もっとも、高機能な魔法具は使うのも大変なやつもあるんだが。使用魔力目安2級とか。
そういうのは一旦置いといて。
シャンデリアは、簡単な方の魔法具。使用魔法目安は8級程度。
つまり、これがちゃんと使えれば、サクラは魔法の素質があるし、使えなければ魔力を全く持っていないってことだな。
って思っていたら。
シャンデリア全体が、虹色の光に包まれて、跡形もなく消えた。
ちょっと待て。
何が起こったんだ?
ありのまま起こ「もういいっす」
……ごめんなさい。
とりあえず、サクラに言いたいことがある。
シャンデリアを消すって、そういうことじゃないよな?蝋燭の火を消せってことだよな?
「私もそのつもりで言ったっすけど……」
「えっと……ごめんなさい」
天井が虹色の光に包まれて、再びシャンデリアが現れた。
「じゃあ……行きます」
サクラがそう言うと、蝋燭の炎が一斉に消えた。
なんだ。魔法具も使えるじゃん。本当に8級落ちたのか?
「昨日までは本当に何もできなかったんです……部屋の明かりも他の子に点けてもらってて……」
「何もないところから何かを作ったり、何かを完全に消して無に帰すっていうのも、理論上不可能って言われてたはずですけど」
うん、よく分かった。
サクラが謎の存在だってことが。
「私……謎の存在なんですか……?」
謎の存在じゃなかったら一体何なんだっていうくらい謎の存在だな。