第1話-4
サクラ……だっけ?サクラも自己紹介するか?
「させてください……」
お願いします。
「市立キリハラ第一高校出身……サクラ・シロカネ、18歳です……今年高校を卒業しました……」
今日は4月1日。ってことは、3月に卒業したのか。今は大学生?
「えっと……大学は全部落ちて……」
大学生じゃないってことは、高卒で就職したのか。
「……」
まさか、無職?
「……はい」
大学の入試とか就職の採用試験とかは、学校とか会社によって色々なんだが、大体共通してるものがある。
それが、魔法の実技。実技試験を科すところがほとんどなんだが、魔法検定で一定の級を持っていれば実技試験は免除、なんてところもある。
高卒レベルの5級くらいが相場なんだが、中には7級や8級で入れてくれるところもある。
それで落ちたということは……。
サクラ・シロカネ、魔法検定は何級だ?
「えっと……2月に8級を受けたんですけど、全属性不合格で……」
全属性不合格?一番下の8級で?
「はい……私、魔法が全然使えないんです……」
それなら大学も就職も決まらなかったのは無理がない。それで路頭に迷って、ここに来たわけか。
「孤児院の出身なんですけど、高校卒業したら全員出る決まりで……大学も就職も決まらなかったけど、出るしかなかったんです……それで、王都のミヤギノに行けば、何かあるかなって……」
なんとなく状況は分かった。
うちで雇ってやるぞって言いたいんだが、ヒバリ、王宮職員の募集って、まだやってるか?
「3月25日で締め切ったっす。定員オーバーになったんで、実技試験やって何人か落としたっす。補欠募集も無いっすね」
そういうことだ。ちょっと来るのが遅かったし、8級落ちたなら仮に受けたとしても不合格だと思う。
「そうなんですか……」
もし働き口が欲しいんなら、王宮じゃなくて、ミヤギノ本通りのお店に言ったらいいんじゃないか?雇ってくれるか分かんないけど、王宮よりは可能性あると思う。
「ヒバリもそう思うっす。王宮には可能性感じないっすね」
「そうですか……分かりました。行ってみます」
早く決まるといいな。
虹色の光に包まれて、サクラの体が消える。
ちょっと待て。
何が起こったんだ!?
ありのまま起こったことを話そう。
サクラの体が突然虹色に輝いて、それが消えたと思ったら、そこにサクラの姿は無かったんだ。
8級落ちたやつが、どんな魔法を使ったんだ?
「テレポートっすかね?」
いや、ヒバリはなんでそんなに冷静なんだ。
「でもおかしいっすね。テレポートは理論上不可能って言われてるはずですけど」
魔法理論専攻のヒバリによると、この世界には、理論上絶対に不可能って言われてる魔法がある。死者を甦らせるとか、何も無いところから物を創るとか、時間を止めるとか。テレポートも、その中の1つ。
それを、8級に落ちたはずのサクラが、どうやって?