第1話-3
行き詰まってきたので、ちょっと気分転換しないか。
正殿を出て、屋外にある噴水広場に行ってみる。
ハコザキ王国の王宮は、中央に噴水広場、正面に儀式などが行われる正殿、左右に内務省や宮内省などの事務所、正殿の裏に王族が生活する後宮がある。
建物の中は駄目だけど、噴水広場までなら、市民は自由に入っていいことになってるんだ。
噴水広場の中央、空色のワンピースを着た女の子を発見。まあ、別に珍しいことじゃないんだけどな。
身長はあたしやヒバリと同じくらいなんだが、立ち居振る舞いがまだちょっと大人になりきれてない感じ。高校生くらいかなと予想してみる。
とりあえず声を掛けてみよう。おーっす。何してるんだ?
「あ……えっと……キリハラ高校から参りました、サクラ・シロカネです……よろしくお願いします……」
面接でも受けるのか?
「あ……えっと……その……」
「アカネさん、とりあえず自己紹介しましょう」
そうだな。まずは自己紹介から……なのか?なんか違う気がするんだが。
まずはあたしから。
アカネ・コヒナタ、25歳。公立ミヤギノ高校体育科出身。中卒じゃない。これ大事。
ヒバリには中卒っていじられてるけど、本当に高卒だからな。
内務大臣ってのは、この国の政治のナンバーツーだ。一応ナンバーワンは女王様だけど、ほとんど政治には口を出さないから、実質内務大臣がトップだったりする。
「アカネさんは高校のときに魔法決闘選手権で3連覇して、特別に内務大臣に採用されたんっす。中卒だから政治の知識が全然無くて、周りの人に助けられてばっかりで」
ヒバリ、その辺にしておこうか。あとアカネさんは高卒です。
ヒバリの自己紹介。
「宮内省所属、女王様侍女のヒバリ・センカワ、22歳っす。女王様と一緒に生活し、女王様のお世話をするのが私の役目っす」
今はちょっと変なことになってるけど、本当は女王様と一緒に過ごして、身の回りのお世話をしたり、話し相手をしたり、そういうのが侍女の仕事だ。
ヒバリは確か、国立魔法大学だったよな?
「アカネさんは中卒っすけど、ヒバリは大卒っすよ。大学では魔法理論専攻だったっす」
アカネさんは高卒です。
とにかく、あたしは魔法の実技はすっごく強いけど、理論的なことはヒバリの方が詳しい。政治とか歴史とかの知識もヒバリの方が上だな。
「大卒っすからね。中卒のアカネさんとは比べ物にならないっす」
アカネさんは高卒です。