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時精物語  作者: 暁 瑚珀
9/12

第八夜 草

これからが、本章・・・かな?

そう思ってください。

あの火事から、数日がたった。

村の再建は、麗斗によって着々と進められ、

白羽も、避けられつつも自分の家を建て直していた。

炎は、思ったよりも早く消え、そのために再建も早くとり行われるようになった。

また、麗斗が指示を出したのは、敷地を広げることだった。

それにより、小さな村は少しずつ大きくなっていった。






村の再建が終了し、のどかな日々が戻ってきた頃だった。


「村長様。近くで戦が起こるようです。

 15歳以上の若者を、集めるようにと・・・。」


村人の一人が持ってきたこの言葉は、新たな波乱の幕開けとなっていた。





「んー・・・。」


立て直した村中の、一番小さい家で、白羽は悩んでいた。

目の前の机に、沢山の薬草を置き、それらと睨み合っていた。


「これは火傷に使えるから、早めに作っておいて、

 ・・・えと、これは長くもつから後でもよし。

 ・・・で、これ・・・は・・・。」


と、一つの草を持ちあげ、目を丸くした。


「あれ?こんな珍しい薬草、見つけてたっけ?」


白羽の手の中には、漆黒の草が横たわっていた。

他の草の中で、一番短く小さく、

それでいて、とてつもない香りを発している草だった。

例えれば・・・。

夏に、腐った魚を置き去りにしてしまった臭いと、

蛙などの死骸で、いっぱいになった入れ物の臭いを、かき混ぜたような・・・。


・・・とにかく、鼻がひん曲がってしまうほどの悪臭だった。


が、白羽は『とにかく』マイペースだった。

手に持っても平然とした顔で、じっと見つめていた。

普通の人から見れば、恐ろしく感じるほど・・・。


しばらく経ってから、草を机に戻すと、


「図鑑に載ってたかな・・・?」


と、奥の自分の部屋に戻っていった。





しばらくして、白羽はまた、狭い部屋へと入ってきた。


「ふぅ。ずっと使ってなかったからね・・・。

 探すのに手間取っちゃった。」


みれば、彼女の服は埃まみれだった。

・・・いったいどこを探したのやら・・・。

額の汗を拭うと、黒い草を前に、

『薬草解剖図鑑』と書かれた、図鑑を開いた。

立っているのに疲れ、部屋の隅にある、木の椅子に腰掛け、

黙って黙々とページをめくっていた。

と、扉を開ける音がした。


「おいっ!白羽、いるか!?」


麗斗が、数人を従えて入ってきた。

白羽のいる、この小さな部屋は、扉を開けてすぐにあるので、白羽はびっくりし、

そっと、扉を開けて、麗斗の前に出た。

(あれ?今日って、訪問の日だったけ?)

ふと、そう思いつつも、白羽は麗斗が来ることに、驚きはしなかった。

ただ、扉を開ける音が、凄まじく、毎回飛び上がっているのだった。

赤い布を纏った、自分より少し大きい麗斗をみて、白羽はたずねた。


「麗斗君、どうしたの?もうお昼ご飯の時間だよ?」


・・・。

聞くことが、なんとなくずれている白羽に対し、

麗斗は、平然と答えた。


「それはもう食べた。

 ・・・そうじゃなくて、今日はお前に用があるんだ。」


口調は、いつもと違い、全く怒っていなかった。

けれど、どこか悲しい感じが含まれていた。

(麗斗君が、全然怒らない?なにかあったのかな?)

いくら能天気な白羽でも、何となく勘付いた。


「お前、毒草なんて集めてないよな?」


「うん。全然。」


村人達が言っていたのは知っているので、聞かれても全く動じなかった。

というか、逆にそんなことを聞く麗斗を不思議に思った。

気を取り直して、白羽が切り出した。


「私が集めてるのは、薬草とか、薬に出来るものだけだよ?

 あ、もしかして、取っちゃいけなかった?」


焦る白羽に、麗斗は首を横に振った。


「いや、別にそれはいい。むしろ好都合だ。

 白羽、今から三百個、解毒薬を作ってくれるか?」


「・・・三百個!?」


いきなりの注文に、白羽は戸惑った。


「・・・作れないのか?」


「ううん!?そんなことはないけど・・・。

 材料が足りるかなぁ・・・って・・・。」


白羽の返答に、麗斗は後ろを向き、

控えていた3人と、頷きあった。


「そういうと思った。

 後ろにいるのは、俺の知っている限り薬草集めの名人だ。

 手助けをしてくれると思う。

 だから、引き受けてくれないか?」


麗斗の目は、鋭く、真剣だった。

いつもの態度とは、全く異なっている麗斗をみて、白羽は固まった。

そして、頷いた。


「・・・うん。やってみるよ。

 だけど・・・。」


白羽は、気になっていたことを言うことにした。

麗斗は、「なんだ?」と、不機嫌そうに聞き返した。


「何でいきなり・・・。解毒薬が三百個も必要になったの?

 村の人達の中にも、私以上の腕を持った薬師くすしだっているのに・・・。

 わざわざ私になんて・・・。」


麗斗が白羽を避けているような気は、何となく判っていた。

なのに、何故、私なのかと、白羽は問う。

麗斗は、少し俯いてから、頑固に首を振った。


「お前は知らなくてもいい。

 むしろ、知ってほしくない。」


三人が材料を探しに行ったあと、麗斗は帰っていった。

はっとして、白羽は部屋に戻り、薬を作る準備を始めたが、

相変わらず、頭の中は混乱していた。

そして、そのことにより、黒い草のことも忘れていた。



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