第八夜 草
これからが、本章・・・かな?
そう思ってください。
あの火事から、数日がたった。
村の再建は、麗斗によって着々と進められ、
白羽も、避けられつつも自分の家を建て直していた。
炎は、思ったよりも早く消え、そのために再建も早くとり行われるようになった。
また、麗斗が指示を出したのは、敷地を広げることだった。
それにより、小さな村は少しずつ大きくなっていった。
村の再建が終了し、のどかな日々が戻ってきた頃だった。
「村長様。近くで戦が起こるようです。
15歳以上の若者を、集めるようにと・・・。」
村人の一人が持ってきたこの言葉は、新たな波乱の幕開けとなっていた。
「んー・・・。」
立て直した村中の、一番小さい家で、白羽は悩んでいた。
目の前の机に、沢山の薬草を置き、それらと睨み合っていた。
「これは火傷に使えるから、早めに作っておいて、
・・・えと、これは長くもつから後でもよし。
・・・で、これ・・・は・・・。」
と、一つの草を持ちあげ、目を丸くした。
「あれ?こんな珍しい薬草、見つけてたっけ?」
白羽の手の中には、漆黒の草が横たわっていた。
他の草の中で、一番短く小さく、
それでいて、とてつもない香りを発している草だった。
例えれば・・・。
夏に、腐った魚を置き去りにしてしまった臭いと、
蛙などの死骸で、いっぱいになった入れ物の臭いを、かき混ぜたような・・・。
・・・とにかく、鼻がひん曲がってしまうほどの悪臭だった。
が、白羽は『とにかく』マイペースだった。
手に持っても平然とした顔で、じっと見つめていた。
普通の人から見れば、恐ろしく感じるほど・・・。
しばらく経ってから、草を机に戻すと、
「図鑑に載ってたかな・・・?」
と、奥の自分の部屋に戻っていった。
しばらくして、白羽はまた、狭い部屋へと入ってきた。
「ふぅ。ずっと使ってなかったからね・・・。
探すのに手間取っちゃった。」
みれば、彼女の服は埃まみれだった。
・・・いったいどこを探したのやら・・・。
額の汗を拭うと、黒い草を前に、
『薬草解剖図鑑』と書かれた、図鑑を開いた。
立っているのに疲れ、部屋の隅にある、木の椅子に腰掛け、
黙って黙々とページをめくっていた。
と、扉を開ける音がした。
「おいっ!白羽、いるか!?」
麗斗が、数人を従えて入ってきた。
白羽のいる、この小さな部屋は、扉を開けてすぐにあるので、白羽はびっくりし、
そっと、扉を開けて、麗斗の前に出た。
(あれ?今日って、訪問の日だったけ?)
ふと、そう思いつつも、白羽は麗斗が来ることに、驚きはしなかった。
ただ、扉を開ける音が、凄まじく、毎回飛び上がっているのだった。
赤い布を纏った、自分より少し大きい麗斗をみて、白羽はたずねた。
「麗斗君、どうしたの?もうお昼ご飯の時間だよ?」
・・・。
聞くことが、なんとなくずれている白羽に対し、
麗斗は、平然と答えた。
「それはもう食べた。
・・・そうじゃなくて、今日はお前に用があるんだ。」
口調は、いつもと違い、全く怒っていなかった。
けれど、どこか悲しい感じが含まれていた。
(麗斗君が、全然怒らない?なにかあったのかな?)
いくら能天気な白羽でも、何となく勘付いた。
「お前、毒草なんて集めてないよな?」
「うん。全然。」
村人達が言っていたのは知っているので、聞かれても全く動じなかった。
というか、逆にそんなことを聞く麗斗を不思議に思った。
気を取り直して、白羽が切り出した。
「私が集めてるのは、薬草とか、薬に出来るものだけだよ?
あ、もしかして、取っちゃいけなかった?」
焦る白羽に、麗斗は首を横に振った。
「いや、別にそれはいい。むしろ好都合だ。
白羽、今から三百個、解毒薬を作ってくれるか?」
「・・・三百個!?」
いきなりの注文に、白羽は戸惑った。
「・・・作れないのか?」
「ううん!?そんなことはないけど・・・。
材料が足りるかなぁ・・・って・・・。」
白羽の返答に、麗斗は後ろを向き、
控えていた3人と、頷きあった。
「そういうと思った。
後ろにいるのは、俺の知っている限り薬草集めの名人だ。
手助けをしてくれると思う。
だから、引き受けてくれないか?」
麗斗の目は、鋭く、真剣だった。
いつもの態度とは、全く異なっている麗斗をみて、白羽は固まった。
そして、頷いた。
「・・・うん。やってみるよ。
だけど・・・。」
白羽は、気になっていたことを言うことにした。
麗斗は、「なんだ?」と、不機嫌そうに聞き返した。
「何でいきなり・・・。解毒薬が三百個も必要になったの?
村の人達の中にも、私以上の腕を持った薬師だっているのに・・・。
わざわざ私になんて・・・。」
麗斗が白羽を避けているような気は、何となく判っていた。
なのに、何故、私なのかと、白羽は問う。
麗斗は、少し俯いてから、頑固に首を振った。
「お前は知らなくてもいい。
むしろ、知ってほしくない。」
三人が材料を探しに行ったあと、麗斗は帰っていった。
はっとして、白羽は部屋に戻り、薬を作る準備を始めたが、
相変わらず、頭の中は混乱していた。
そして、そのことにより、黒い草のことも忘れていた。




