第六夜 村
麗斗は、白羽の生まれた後、この世に生を受けたという。
そしてその後、病弱だった母親はまもなく息を引き取り、
白羽と同い年の、小さな麗斗を、村長は一人で育ててきた。
が、赤子・・・白羽を贄に出す為、父親おも亡くす。
麗斗は大婆に預けられたが、父親が逝ってしまった後、
村長が死んだ、という情報を誰も知らぬ前に、
泣き止む事無く、嵐のように泣いたという。
まるで、自分が殺したかのように、一番に泣いたという。
麗斗は、そのまま大婆に育てられた。
そして、山の活動が終わったにも関わらず、長達が帰ってこない、と
勘付いた人々が、山を登ってみたところ、
長達の姿は見当たらず、あの、小さな赤子一人が残されていた。
村人達は、時精が長達を殺してしまった、と推測し、
赤子をこのまま放って置くと、今度は村全体に被害が出るのではないかと恐れ、
赤子を連れて、村に戻った。
赤子はその後、大婆の下へと渡った。
その場にいた、同じ年の麗斗は、もう一人の赤子を見ると、
やはり、大泣きしたのだった
そして、時精の赤子の側には、まれに、白い猫がうろついていて、
麗斗の側には、その猫とま逆の、漆黒の色をした猫が、時々寄り添っていた。
その猫は、紅い燃えるような瞳を持ち、
首下に青い透き通った石が、アクセとして付いていた。
五年の月日が流れると、大婆は麗斗に時精の話をし、
殺された父親は、一緒にいる子に殺された、と言った。
麗斗は、酷く落ち込んだ。
部屋に篭りきり、食事もしなくなった。
が、数日後、麗斗が長になった時、
麗斗は、すぐさまもう一人の子を、大婆の家から追い出し、
自分も、親の住んでいた場所に、住み戻った。
この頃から、時精の子のことを、村人は『白羽』と呼び始めた。
白羽の白い髪は、五歳児とは思えないほどの長さに伸びていき、
羽根のように軽いことから、そう呼ばれていた。
そして、時精の白髪は、とても長かったとか。
が、問題の紅い瞳は、年が経つにつれ、徐々に色を薄くし、
淡い、森の木漏れ日のような色へと、変化していった。
それから、災難が起こることもなく、白羽と麗斗はお互いを避けながら過ごして行った。
何事も起こらず、むしろ豊作が毎年続くと言う、穏やかな日々になっていった。
白羽に寄り付く人は、それでも出なかった。
彼女の家に行くのは、麗斗だけ。
それも、父親のことを訊ねる為だけに、週に一回。
白羽は、その頃の記憶は一切残っていなかったので、
麗斗が、いくら怒鳴っても、首を傾げるだけだった。
短気な麗斗は、彼女の行動に、いつも腹を立てて帰っていた。
・・・その光景は、村の人々が嫌な眼で見つめることになっていたが、
別の方向から見れば、仲の良い、兄弟喧嘩のようにも見えた。
白い猫は、それ以降、姿を現さなくなった。
同時に、黒い猫も、村に訪れることは無くなった。




