第四夜 静寂
猫がゆっくりと起き上がった。
背筋をピンと伸ばすと、そのまま足早に、その場を後にした。
立ち去る前に、白羽をしっかりと見ていた。
「あっち・・・。
ったく、村長も楽じゃないぜ。」
麗斗の独り言、勃発。
でも、腕の中で落ち着いてきた赤子の顔を見ると、少し静かになった。
あの後、大黒柱につま先をつっかえたものの、無事に出ることが出来た麗斗は、
行く前に立ち寄った、井戸まで直行。
赤子と自分に水を被せると、
まだ緑色の輝いていた草原に向かって、歩いてきたところだった。
細い道なので、倒れないように慎重に歩いていた麗斗だが、
草原に立っている、人影を見ると、危うく赤子を落としそうになっていた。
長く、白い髪の後姿。
白羽は視線に気づくと、麗斗の方に振り返った。
その目は、いつもの澄んだ淡い色だった。
そして、村の炎でほのかに紅く揺らいだ。
麗斗は、それを無視すると、
山を下りる道まで、走った。
白羽は何も言わずに、それを見つめた。
『白羽。白羽が父さんを殺したんだ。』
麗斗は、自分にそう言い聞かせていた。
唇をかみ締めて、息を殺す。
やけに静かな夜だった。
零月零日。
一人の赤子が、『時の割れ目』といわれる異空間から生まれた。
透き通った白い肌と、輝くばかりの白い髪。
眠っている姿は、とても可愛らしく、それを見つけた人共は、神からの贈り物だと、
勘違いした。
白い、羽根のように軽い赤子だった。
が、人々は、赤子の目が覚め、目を開いた瞬間、
その赤子を海に流した。
赤子の瞳は、紅かった。
そして、村の者々が集まり、「自分らは馬鹿だった」と言い合った。
『時の割れ目』から生まれる者は、必ず『時精』に関わっていると。
目が紅いのは、時精の力を持つ者だけだと。
その時、その村の村長は麗斗の父だった。
時精は、海に流されただけでは、死なないと、
そう思った村長は、次の日、数人を赤子を流したところへと送り出した。
その時、過去の悲劇は始まった。
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