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時精物語  作者: 暁 瑚珀
2/12

第一夜 蛍

少女は、長い草原の中に、一人立っていた。

蛍が、その草の上を軽やかに飛び、

月と星は、少女と蛍をはっきりと照らし出していた。



高等部で束ねているにも関わらず、地面に付きそうなくらいの長く、白い髪。

白い肌に、淡い、緑色と水色の中間のような色の目と優しい口元。

小柄な体には、草原と同じ、薄い若草色の衣を纏っている。

少女の周りには、暖かさと、似合わない冷たい気配が漂っていた。



蛍は、しばらく飛び続けたが、やがてその身を草原に落としていった。

涼しくなりかけた、夏の終わり。


少女は、足元に落ちた蛍を一匹、両手でそっと持ち上げた。


「ありがとう。・・・ゴメンね」



そういって少女は、その場の土を浅く掘り、蛍を納めた。

少女は、ただ、泣いていた。

小さな涙が、一つ、星屑のような粒になって、

茶色い、乾いた土に落ちた。


満月は、その光景を、何も言わずに見ていた。





















「どうして白羽は死なず、殺そうとした人たちが死んでいくんだっ!!」


麗斗は、怒りを床に叩き付けた。

木の幹のような、赤茶色の髪が垂れる。

そして、真実を見極めるような、鋭い茶色の目は、赤々としていた。

赤色を主調とした、長めの布を肩から羽織り、

その先には、オレンジ色の羽根が、アクセントとなって揺れていた。


「長、怒りをお静め下さい。」


麗斗のとなりに居座っている、老いぼれた爺がいった。

長いひげと、白髪の髪は、くしゃくしゃだった。

その発言に、涙を飲む人もいた。








「・・・長は、生まれてすぐに母君を亡くされ、父君も、時精に殺されてしまった。」


集会の後、爺が村の人たちを集め、囁くような声で言った。

人々は、黙って聞いていた。

その中でも、やはり、涙ぐむ人がいた。


「これ以上、犠牲を出したくないと、長は願っておられる。

 皆も、長の力になれるよう、頑張るのじゃ。」


それだけ言うと、爺は建物の中に消えていった。

人たちの中に、言葉を発した人は、誰一人いなかった。











「・・・くしゅん。・・・・・・?」


その頃、白羽は自分の話しをされていることを、知らないまま、

集会にも呼び出されずに、のんびりと薬草を探していた。

団子でポニーテールにしている、銀色に近い白髪が、少々冷たい風に煽られる。


村から、ほんの少し離れたこの場所は、白羽が見つけたものである。

夏の夜には、蛍が飛び通い、小川も近くに流れていて、空気はとても澄んでいた。

春には様々な花が、実を結ぼうと、必死に開き、

秋は、山にある、紅葉の木から葉が舞い落ちてきて、草原は紅葉の広場になる。

冬になると、生命いのちあるものが、土の下に眠り、静かな草原に戻るのだった。


白羽にとって、この場所はお気に入りだった。


・・・と、村の方から話し声が聞こえた。

村に続く、細い道からだった。


「まぁ、また毒草、探している・・・。」


「私達も、いつ殺されることやら・・・。」


白羽が振り向くと、二人は、

「いきましょ・・・。」

と、小声で呟き合い、早足で村に戻っていくのだった。

もちろん白羽は、毒草など探してなんかいない。

村の人々が何故、殺すとかどうかを言うことが、白羽には全くわからなかった。


ただ、勘で思っていることが、

(昔、この村で何かあったんだ。)

と、言うことだけだった。


・・・けれども、白羽は能天気なので、あまり気にせずにのうのうとやっていた。

それだけが、白羽の長所であり、短所であった。









それから少し経った時、

さきほどの、二人の悲鳴が聞こえ、反発的に後ろへと振り返る。

その村の様子を見て、せっかく集めた草を、白羽はその場に落としてしまった。

背筋に、冷気が走る。



白羽の目に映ったのは、

村の真上にある、太陽の色と同じ、赤々とした炎に包まれた、小さな村だった。

第一夜、書き終わりました!!

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