第一夜 蛍
少女は、長い草原の中に、一人立っていた。
蛍が、その草の上を軽やかに飛び、
月と星は、少女と蛍をはっきりと照らし出していた。
高等部で束ねているにも関わらず、地面に付きそうなくらいの長く、白い髪。
白い肌に、淡い、緑色と水色の中間のような色の目と優しい口元。
小柄な体には、草原と同じ、薄い若草色の衣を纏っている。
少女の周りには、暖かさと、似合わない冷たい気配が漂っていた。
蛍は、しばらく飛び続けたが、やがてその身を草原に落としていった。
涼しくなりかけた、夏の終わり。
少女は、足元に落ちた蛍を一匹、両手でそっと持ち上げた。
「ありがとう。・・・ゴメンね」
そういって少女は、その場の土を浅く掘り、蛍を納めた。
少女は、ただ、泣いていた。
小さな涙が、一つ、星屑のような粒になって、
茶色い、乾いた土に落ちた。
満月は、その光景を、何も言わずに見ていた。
「どうして白羽は死なず、殺そうとした人たちが死んでいくんだっ!!」
麗斗は、怒りを床に叩き付けた。
木の幹のような、赤茶色の髪が垂れる。
そして、真実を見極めるような、鋭い茶色の目は、赤々としていた。
赤色を主調とした、長めの布を肩から羽織り、
その先には、オレンジ色の羽根が、アクセントとなって揺れていた。
「長、怒りをお静め下さい。」
麗斗のとなりに居座っている、老いぼれた爺がいった。
長いひげと、白髪の髪は、くしゃくしゃだった。
その発言に、涙を飲む人もいた。
「・・・長は、生まれてすぐに母君を亡くされ、父君も、時精に殺されてしまった。」
集会の後、爺が村の人たちを集め、囁くような声で言った。
人々は、黙って聞いていた。
その中でも、やはり、涙ぐむ人がいた。
「これ以上、犠牲を出したくないと、長は願っておられる。
皆も、長の力になれるよう、頑張るのじゃ。」
それだけ言うと、爺は建物の中に消えていった。
人たちの中に、言葉を発した人は、誰一人いなかった。
「・・・くしゅん。・・・・・・?」
その頃、白羽は自分の話しをされていることを、知らないまま、
集会にも呼び出されずに、のんびりと薬草を探していた。
団子でポニーテールにしている、銀色に近い白髪が、少々冷たい風に煽られる。
村から、ほんの少し離れたこの場所は、白羽が見つけたものである。
夏の夜には、蛍が飛び通い、小川も近くに流れていて、空気はとても澄んでいた。
春には様々な花が、実を結ぼうと、必死に開き、
秋は、山にある、紅葉の木から葉が舞い落ちてきて、草原は紅葉の広場になる。
冬になると、生命あるものが、土の下に眠り、静かな草原に戻るのだった。
白羽にとって、この場所はお気に入りだった。
・・・と、村の方から話し声が聞こえた。
村に続く、細い道からだった。
「まぁ、また毒草、探している・・・。」
「私達も、いつ殺されることやら・・・。」
白羽が振り向くと、二人は、
「いきましょ・・・。」
と、小声で呟き合い、早足で村に戻っていくのだった。
もちろん白羽は、毒草など探してなんかいない。
村の人々が何故、殺すとかどうかを言うことが、白羽には全くわからなかった。
ただ、勘で思っていることが、
(昔、この村で何かあったんだ。)
と、言うことだけだった。
・・・けれども、白羽は能天気なので、あまり気にせずにのうのうとやっていた。
それだけが、白羽の長所であり、短所であった。
それから少し経った時、
さきほどの、二人の悲鳴が聞こえ、反発的に後ろへと振り返る。
その村の様子を見て、せっかく集めた草を、白羽はその場に落としてしまった。
背筋に、冷気が走る。
白羽の目に映ったのは、
村の真上にある、太陽の色と同じ、赤々とした炎に包まれた、小さな村だった。
第一夜、書き終わりました!!
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