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時精物語  作者: 暁 瑚珀
11/12

第十夜 紅

白羽が目を覚ましたのは、次の日の昼だった。


「・・・っは!?もうこんな時間!?

 いっけない・・・私としたことが・・・。」


慌しく椅子から離れると、次に机の上の薬を抱えた。

(散々苦労して作ったものだ。慎重に持っていかなければ・・・。)

そんなことを考えていたはずの白羽だが、

やっぱりお決まりとして、抱えた直後に本につまずき、

ズテーンッと、大きな音と共に、ほこりの中に突っ込んだ。



宙に舞う薬の入った小瓶。

もちろん止められる術が、今の白羽に有るわけ無かった。

落ちる直前、

誰かが白羽の部屋に入ってきた。


「・・・馬鹿!

 薬の材料集めに苦労した、あいつ等のみにもなってみろ!!」


麗斗がとっさに薬を救ったおかげで、薬は無事となったが、

白羽はこの後、散々怒鳴られることになった。















説教(?)の時間が終わると、麗斗は薬を持って出て行った。

どうやら、長じきじきに来なければならないほどの、急ぎだったようだ。

そんなことはさも知れず、白羽は怒鳴られたことにションボリとしていた。


髪を結い直し、さて何か食べようとした時、

外で大きな地響きが起こった。


地響きと同時に、火花が舞い散ってくる。

立ち直ったばかりの村は、あっという間に火に飲み込まれたみたいだった。

家の外から、細く叫び声が聞こえる。

子供が泣く声、逃げ走る音、家が崩れる音・・・


全てがよくない兆しのように聞こえ、白羽を怯えさせた。









「空襲・・・だと!?

 こっちは戦力もまともに備わっていないのにっ!!」


「長!村の大半が空襲により焼失!

 もう逃げるしか道はありませんっ!!」


「・・・クソッ!!

 皆、村の者々をつれて、山下の隠れ家へ!」



山を二つ程越えた、大きな国からの攻撃のようだった。

次々に放り込まれる鉄の塊。

それにより、近くは炎の海になり、逃げる人を迷わせた。

白羽もそうだった。

家が焼けて、崩れる音がしたと同時に出てきた白羽は、

涙目になりながら、行く先のない、あの細い道を歩いていた。

大好きだった草原も、今回は赤く燃え、白羽を受け入れてはくれなかった。


そして今の白羽の瞳には、薄く紅い光が差し込んでいた。



そして一人、子供が転び、火に囲まれそうになったのを見、


「あぶないっ!」


と、叫んだ。







青白い光が、白羽の周辺を包み込んだ。

髪留めのゴムに、少しひびが入る。


次の瞬間には、世界は灰色に染まり、ピタリと動かなかった。

揺れる炎の先まで、熱を帯びずに固まった。

もちろん、その場に居た子供も、叫ぶ声も。







時が、止まった。




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