金の卵を獲る
ヤマオカが見つけた金の卵は、左腕の投手だった。
名前を廣澤 紀洋育成二年目の20才。
荒れ球だが、速球とチェンジアップ、二種類のスライダーを投げ分ける。
横と縦のスライダーはかなりのキレだ。
佐久間の下で鍛えれば榊をも越える逸材だ、とヤマオカは確信した。
(コイツがウチに来て一人前になれば榊との両サウスポーで戦力がアップ出来る)
ヤマオカは即戦力とは考えていなかった。
しかし、将来性は十分にある。
何故ゴールデンズはこういう選手を埋もれさせているのか。
勿体ない事だが、チーム事情というのもあるのだろう。
ヤマオカは廣澤を獲る事に決めた。
しかし、浅野はエンペラーズには必要な選手かと言えばそうでもない。
エンペラーズには高梨がいる。
同じサードならどちらを獲るか。
ヤマオカは高梨を獲る。
バッティングでは浅野が遥かに上だが、総合的には高梨の方が上だと思っている。
これは榊も言っていたが、サードとしての守備力、キャプテンとしてチームを引っ張り、タイミングよくマウンドに駆け寄り投手に声を掛ける。
浅野はどちかと言えば、打撃に関しては、櫻井さえも凌駕するスラッガーだが、守備は高梨に及ばない。
チームを引っ張るタイプかと言えばそうでもない。
むしろ孤高なスラッガーというイメージだ。
浅野が加入すれば打線はリーグ1の破壊力になるだろう。
しかし、ポジションはどうするか?何番を打たせるか?
そう考えると、無理してまで獲得しようとは思わない。
やはり、このトレードは我々の方が不利だ。
出来る事なら白紙にしたい。
ヤマオカは寝ずに考えていた。
すると深夜、スマホから着信があった。
(オーナー?)
阿佐からの着信だ。
「はい、もしもし」
「ヤマオカ君、分かったぬ浅野をトレードに出す理由が」
阿佐が何かを掴んだようだ。




