早くも敬遠
ワンナウト、ランナーは一塁三塁で打席にはトップバッターの大和が右打席に入る。
スイッチヒッターの大和はここ数試合の打率は4割を越える好調ぶりだ。
スミスは大和に指示を出さず、本人のやりたいようにやらせる。
初球から振っていく大和。
しかしアウトコースのシンカーを空振りしてワンストライク。
大和はバットをやや短く持ち、ミートに徹するバッティングに切り替えた。
ガンズもここでゲッツーを取りたい所だ。しかしバッターは球界を代表する俊足、大和だ。
大和を塁に出したら次は櫻井だ。
真中は櫻井に長打は打たれてないのだが、ランナーがいるときの櫻井はかなり手強い。
セットポジションから真中が第二球を投げる。
低めから浮き上がる独特の軌道を描いたストレートが決まる。
「ストライク!」
たちまちツーストライクと追い込んだ。
次は一球外すか、それとも一気に三球で勝負に行くか。
真中が投げた。
インコースに食い込んでくるスライダー。
大和はバットを止めた。
「ボール!」
手を出していたら引っ掛けて内野ゴロになっていたであろう。
カウントはワンボール、ツーストライク。
もう一球様子を見るか…
真中が四球目を投げた。
アウトコースギリギリから外に落ちるシンカー。
(しまった…!)
大和は思わず手が出たが、ボールはバットをすり抜ける様にミットに収まった。
「ストライクアウト!」
空振りの三振でツーアウト。
しかし次は球界を代表するスラッガー櫻井だ。
櫻井を2番に器用したのはこういうチャンスが巡ってくる高いからであろう。
櫻井がコールされ左打席に入る。
23才ながらスラッガーとして堂々としたオーラを見に纏っている。
真中からまだ本塁打を放っていないが、シングルヒットなら何本も放っている。
するとキャッチャーが立ち上がった。
敬遠策に出たのだ。
球場内はブーイングに包まれた。
回はまだ三回。
ガンズベンチは今日の高峰の出来を見て、一点でも与えたら負けると思ったのだろうか。




