トーマスの恩師
佐久間ともう1人の人物は、トーマスJr.がマイナーリーグ時代に監督をしていた、ランディ・スミスという初老の白人だ。
トーマスJr.は全米ドラフト1位で地元アリゾナ セインツに入団。
父親のウェイン トーマスは、メジャーの経験は無いが、3Aで投手経験がある。
ルーキーリーグ時代から尊大な態度で、チームメイトから煙たがられていた存在だった。
練習はサボり、夜はナイトクラブで女性を口説き、翌朝女性同伴でグランドに行き、気分が乗らないとベンチで居眠りをしていた。
一晩酒を飲み、その勢いで打席に立ち、彼の態度をたしなめた監督と口論し、途中で帰ってしまうこともあった。
素質は一流で、将来のスターと呼ばれていたが、素行の悪さも超一流で、周囲は手を焼いていた。
トーマスJr.が3Aに上がった時、
監督室にノックもせずに勢い良くやってきて
「 I'm Wayne Thomas Jr. It is a draft first place player(オレはウェイン・トーマスJr.ドラフト1位選手だ) 」
と不躾な自己紹介をした。 当時の3A監督であったランディ・スミスはそんなトーマスJr.の顔を睨み付け
「 I'm Randie Smith, the head coach of this team.
Leave this room quickly if you underspand it.
And if you don't knock the door,you never come here again!(私はランディ・スミスでお前の監督だ。それが分かったなら、とっととこの部屋から出て行きやがれ。それにノックする気がないのなら、二度とここには入ってくるな!)」と怒鳴りつけたという。
スミスの教育は厳しく、守備で怠慢プレーを見せた時には容赦なくベンチに引っ込めることもあった。
そんな厳格なスミスの姿を見て、トーマスJr.もスミスに対する尊敬の念を抱いた。
以来、トーマスJr.はスミスの意見には必ず従い、1度たりともNO,と言った事はない。
やがてトーマスJr.はメジャーに昇格し、ルーキーイヤーに新人王を獲得した。




