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Baseball Love 主砲の一振り  作者: sky-high
理想のラインナップ
44/138

逆転ツーラン

室田がツーベースヒットを打ち榊が打席に入る。


「オレが決めてやる!」


意気込んでいたが、榊はバッティングが下手だ。


普通ピッチャーとはバッティングもかなりの腕前である。

プロ野球のピッチャーというのは、素質の塊のようなものだ。


バッティングが下手なワケがない。


しかし榊はド下手だ。


榊が投げる日はどんな状況でも必ずアウトが1つもらえると言われる程である。


満足に送りバントも出来ないので、チャンスの場面に榊の打順が回ってくると、代打を送られる事もよくある。


ヤマオカは代打を送らず榊を打たせるようにした。


今代打を送ったら次の回からピッチャーを交代しなければならない。


ここはまだ代える状況ではない。


「ストライクアウト!」


案の定ブンブン振り回して榊は三振した。


「アノヤロー!オレとの勝負避けやがったな!」


(…お前のバッティングが下手すぎるんだよ)


心の中でみんなそう思った。


そして打順はⅠ番に戻り大和が打席に入る。


「Hey,YAMATO! Try to do drastic batting like you(お前らしく思いきっていけ!)


トーマスJr.がベンチから叫ぶ。


大和は何を言ってるのか理解できないが、多分打撃練習の時に言っていた【思いきったバッティングをしてみろ】という事だろう。


(よしっ)


大和は少しバットを長く持った。


鋭く振り抜く!


灘は初球アウトコースに外れるボール球を投げた。


最悪歩かせて次の中田で勝負しようという計算なのか。



しかし敬遠ならキャッチャーの矢幡が立ち上がるのだが、その様子はない。


勝負に出た。


そして2球目に投じたスライダーが甘く内側に入った。


大和は鋭く腰の回転を効かせ振り抜いた。


打球はライトにグングンと向かいフェンスを越えた。


「逆転だぁ~っ!」


わき返るベンチそして観客。


大和は移籍後初の安打がホームランという素晴らしい結果を残した。


(やっぱり勝負はアカンかったか…)


矢幡は2年目の灘に試練を与える意味で勝負させたのだった。


これから先、何度もこういう場面を迎えるだろう。

その都度逃げてばかりではなく、力でねじ伏せる事も必要となる。



結果、灘は打たれたが、まだシーズンは始まったばかり。


いい勉強になったはずだと矢幡はおもった。



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