初日から大乱闘
キャンプ初日のスタートはキャッチボールから始まる。
各々二人一組になりキャッチボールで肩をならす。
見つける相手のいない、トーマスJr.と榊がキャッチボールをする。
お互い回転のよいボールを放る。
パーンッ!グラブに収まりそれを返す。
榊のボールが少し逸れた。
「Throw it here! Unskillfulness (ちゃんと投げろ、下手くそが!)」
トーマスJr.が言う。
「何言ってんだか全然わかんねぇーよ、このゴリラ」
榊も言い返す。
トーマスJr.は194㌢100㌔ある巨漢だ。
黒人特有のパワーとバネのある身体でワイルドなプレイが売り物だ。
アリゾナ出身で、必ず各球団のエースを仕留めるそのバッティングは、アリゾナのガラガラヘビという異名を持つ。
だが、榊にしてみれば、目の前にゴツいゴリラがいるようにしか思えない。
「 It's an impertinent Jap(生意気なジャップめ!)」
トーマスJr.がジャップと暴言を吐いた。
「あれぐらいの事でガタガタ騒ぐなこのMotherfucker!」
この瞬間二人のコミュニケーションが成立した。
怒り狂い突進するトーマスJr.
グラブを叩きつけ、こいコノヤロー!と応戦する榊。
初日から大乱闘が始まった。
オーナーは
「ぬーーーーーん!にゃんたる醜態!早く二人を止めるぬ!」
と言い一目散にグランドに走り仲裁に入るが
「邪魔だ!」
「 Get out of my way, you twerp!(邪魔だどけ、バカヤロー)」
と、二人にツープラトンのブレーンバスターを食らい失神。
そして乱闘が再開。
「やめろ、お前ら!」
選手やコーチ陣が割って入り騒ぎは収まった。
二人に怪我はなく、大怪我したのはオーナーだけだった。