オーナーのウザい激励
開幕前日はハードパンチャーズの本拠地パンチャードームで軽い調整を行った。
選手達はフリーバッティングや、ランニング、キャッチボールブルペンでは投げ込み等をして明日の開幕に備えた。
そして、夜はオーナーが宿舎に訪問し選手達に激励の挨拶をしていた。
「ムヒョヒョヒョヒョヒョ!明日は開幕ぬ!何が何でもハードパンチャーズに勝つんだぬ!
あんなインチキ野球はけしからんぬ!
ワハハハハハハ」
インチキ野球…
そう土佐ハードパンチャーズは本拠地パンチャードームでの勝率は7割から8割という驚異的な率なのである。
ビジターでの勝率はせいぜい3割弱。
この倍以上もの勝率を挙げるパンチャードームでは、何かがあるという噂があるが、何か細工をしている証拠もない。
ただ、明らかに不自然な勝率である。
昨年覇者の東京ゴールデンズでさえもパンチャードームでの成績は2勝18敗という散々な成績なのである。
「ムヒョヒョヒョヒョヒョ!必ず勝ってあのバカオーナーとバカGMをギャフンと言わせるんだぬ、ワハハハハハハ」
そしてオーナーは榊の前に来て
「明日は完全試合をするんだぬ!ムヒョヒョヒョヒョヒョ」
無茶苦茶な事を言う。
「さっきからギャーギャーうるせえオヤジだな」
「おいっ榊!オーナーに向かって何て事を言うんだ!」
オーナーの御供をする秘書が慌てている。
「野球はやるのはこっちだ!勝つか負けるかなんてのはやってみなきゃわかんねえだろうが!」
「にゃんと!にゃんたる不穏なヤツだぬ!負けるのは絶対に許さんぬ!」
「 This noisy goddamn guy!(さっきからガタガタうるせーオヤジだな)」
トーマスがオーナーを抱えあげツームストンパイルドライバーで串刺しにする。
ドガッ!!
「ぬーーーーーん!」
「そんなに勝ちてえならテメーが明日投げろボケッ!」
すかさず榊がダッシュしてエルボードロップを落とす。
「ンギャッ!!」
哀れオーナーはたましても失神KOした。
「何故あの二人はああいう時だけ息が合うんだろ…」
櫻井がつぶやきながら、オーナーに4の字固めをガッチリ極めてぐいぐい締め上げる。
「ホントだよな。息の合ったコンビネーションだな…」
抑えの土方が、オーナーの右腕を腕ひしぎ逆十字を完ぺきに極めた。
「ぬゎっ!!」
そしてオーナーは担架に運ばれた。
「明日は何を仕掛けてくるのやら」
とにかく明日からペナントレースがスタートする。
のっけからカラクリ仕掛けのパンチャードーム。
高梨は一抹の不安を感じた。




