榊のワガママ
「 Yoshida. That fellow says how?(吉田、アイツは何て言ってんだ?)」
宇棚を指し吉田に聞いた。
「 Thomas that I am sorry. I cannot understand what he says(悪いが何を言ってるのか理解できないんだ)」
「 What?(何だって?)」
トーマスJr.は冗談だろ?という感じで言った。
「 The words that he speaks…It cannot be understood.(彼の言うことが意味不明なんだ…)」
トーマスは欧米人にありがちなお手上げのポーズをして首を傾げた。
「何かイライラすんだけどそのGMさんがオレらに何の用なんだ?」
榊もかなりカリカリしている。
「私静岡県出身です(^-^)」
「だからどうした?」
「静岡はサーカー大国です(^-^)」
「サーカーってなんだ?」
榊が他の選手達に聞いた。
「知ってるか?」「いや、知らん」
みんな知らない。それもそのはず【サッカー】を【サーカー】と言ってるからだ。
彼は横文字が弱い。
「何だか知らねえけど、アンタ敵のチームが飯食ってるとこでも偵察に来たのか?」
「私ここで待ち合わせしてます(^-^)」
待ち合わせ…?
何だそりゃ?
「私サイトで知り合った女性とここで待ち合わせしてます(^-^)」
「サイトって、アンタ出会い系やってのか?」
榊がすっとんきょうな声を上げた。
「私今日会います(^-^)恋人でいいかなぁ」
「ギャーハッハッハッハッハッハww」
全員爆笑した。
トーマスJr.も釣られて笑った。
そもそもGMと言っても宇棚はGMの意味が解らない。
その職に就かせたオーナーの結野は、ウチのオーナーと同じぐらいアホなんだろうと。
「そういう事ね…アンタ騙されてるよ」
榊が続けた。
「そりゃサクラってヤツだ」
榊も何故知っているのか不穏だ。
「ムッシュその人はサクラじゃありません(^-^)エミさん言います(^-^)」
「名前のサクラじゃねぇ!マジイライラするなぁコイツ!」
「高梨!」「はい」
「敵のGMが来てる店で飯が食えるかよ?帰るぞ!」
「待ってください榊さん!宇棚さんはプライベートで来てるみたいだし、問題ないんじゃないですか?」
高梨の言うとおりだ。
そもそもここは土佐ハードパンチャーズのホームタウンで、相手のGMとバッタリ会っても驚く事ではない。
榊がこの食事会でトーマスJr.と一緒にいるのが面白くないだけであり、宇棚と会ったからといって宇棚を責めるのは筋違いだ。
「榊さん、もう少しいましょうよ」
「うるせーな!オレはこんな気分の悪いとこに居たくねぇんだよ!」
聞き分けのないヤツだ。
その時
「いい加減にしねぇか、おいっ!」
と凄みのある声で榊を一喝した。
「テメーいつまでお山の大将気取りだ、あぁ?」
榊に凄んだのは、野手最年長の垣原 延昭だ。




