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Baseball Love 主砲の一振り  作者: sky-high
優勝争い
134/138

必殺のフォークボール

榊がマウンドに上がった。

沸き上がるバーチーヤンキースタジアム。

この非常事態を予測していたかのように、ブルペンで肩を作っていた。

そしてキャッチャーも一条から室田に変わる。両チームとも総力戦だ。


榊の登場で、エンペラーズにやや有利な展開になるのか。

投球練習を終え、3番陳が打席に入る。


榊の第一球はドロンとしたスローカーブ。


「ストライク!」


まずはワンストライク。


続く第二球は内角へ食い込むスライダー。陳は思わず腰を引いた。


「ボール!」


僅かに外れたが、今日の榊の球はキレが抜群だ。


そして三球目、インハイのストレート。


「ストライク!」


スピードガンは152㎞をマークした。


しかも手元でホップするように榊のストレートは唸りを上げていた。打席に立っている陳にはそれ以上に速く感じていた。


体感速度は160㎞を越えている。


四球目、低めに沈むサークルチェンジ。


陳は途中でバットを止めた。


一塁塁審がセーフとジャッジ。


「ボール!」


ツーボール、ツーストライクと平行カウントとなる。


次は一球外すか、それとも勝負に行くか。


五球目を投げた。


「 好了,它來了(よし、来たっ)」


陳は榊のアウトローのストレートを読んでいた。


陳の自慢のリストでバットにボールが乗るように捕らえたが、球の威力が勝り、バットが折れた。


打球はフラフラとショート大和、レフト松浦のあいだに落ちるポテンヒット。


陳がラッキーなヒットで出塁した。


ストレートに威力があるあまり、ショートとレフトの間に打球がポトリと落ちた。


普通ならば、レフトフライで打ち取っていた。


しかし陳も今の打球の衝撃で自慢のリストを痛めてしまう。


「 手腕子疼痛了…(手首をやっちまった…)」


手首を抑えながら陳は呟く。



続くバッターは4番、八幡。


榊にヒットを打たれた同様はない。


むしろピンチを楽しむのが榊のハートの強さだ。


(ここで流れを変えなアカン)


4番打者として意地を見せなければ、そう八幡は思い打席に入った。


「テメーと、ボス猿だけは絶対に三振にしてやんねーと気が済まねえ!」


榊がマウンド上でふてぶてしく立ちはだかる。


初球アウトコースギリギリにストレートが決まる。


「ストライク!」


八幡は動かない、いや動けなかった。


榊のストレートはそれほどキレを増していた。


二球目はインハイを突くストレート。


八幡がのけ反る。


「ボール!」


そして三球目はスローカーブを投げた。


虚を突かれ八幡はバットが出なかった。


「ストライク!」


ストレートの後のスローカーブはミットに収まるまでかなり遅く感じる。


カウントはワンボール、ツーストライク。


(次で決めてくるはずやっ)


八幡は次の球を狙に定めた。


榊が四球目を投げた。


真ん中やや低め


「よし、もらったーっ!」


八幡がスイングした。


「…っ?!」


しかしボールは手元でストンと落ちた。


「ストライクアウトっ!」


榊はフォークボールを投げたのだ。

(榊がフォークボールやと?くそっ!やられた!)


悔しがりバットを叩きつけた八幡、それもそのはず榊はフォークボールを投げた事など1度もなかったからだ。


今シーズン榊はフォークボールを習得するためにブルペンではフォークボールの練習をしていた。


ようやくマスター出来るようになり、八幡相手に初めて投げたのだ。

ぶっつけ本番とはいえ、ここぞという時にフォークボールを投げる榊のマウンド度胸もかなりのものだ。

悪童と言われながらも、練習は決して怠らない。

野球に対する姿勢はエンペラーズナインも一目おいている。


裏をかかれた八幡はまんまと騙され空振りをした。


落胆の色を隠せない八幡はベンチに戻り際、守山の顔を見る。



「あんな場面でフォークを投げてくるなんて…」


守山は八幡の肩をポンと叩いた。


「まだ終わりじゃねぇ!上を向け、弟!」


守山が八幡を弟と認めた。


そして打席に守山が入る。


「来たなボス猿!テメーも三振にしてやる」

不敵に笑みを浮かべた榊が更にギアを上げた。





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