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Baseball Love 主砲の一振り  作者: sky-high
ペナントレース中盤
105/138

まさかのノーヒットノーラン

球場内が異様な歓声に包まれる。


「おい、まさか達成すんじゃねぇだろなっ」


「んなワケねぇだろ、もうそろそろ打たれるに決まってんだろ」


「浅野だって打てねぇんだぜ!もしかしたらやるかも」


「いや、それはあり得ない。だって、おヅラだぜ」


「一応あのハゲだってエースだったじゃん」


八回を終わり、ゴールデンズはいまだノーヒット。


六回にフォアボールで出塁した以外はパーフェクトに抑えられている。



そして九回の表、ゴールデンズの攻撃は8番という下位打線からだ。


ゴールデンズは代打攻勢で何とかノーヒットだけは免れたいところだが、今日の小倉の投球に手も足も出ない。


ストレートのキレが良く、カーブ、フォークが冴え渡る。


小倉はストレートも変化球も同じ投げ方をするので、打者は見分けをつける事が難しい。


決して速くないストレートだが、奪三振率は高峰よりも上だ。


1試合の平均奪三振率は、高峰が8.52なのに対し小倉は8.73と三振を多く獲れるピッチャーなのだ。


大学時代は、【ドクターK】と言われ、ドラフトでは3球団が1位指名し、抽選でエンペラーズが獲得した程だ。


ドクターKとは、奪三振を多く獲るピッチャーの称号のようなもので、 【K】とは、ストライクを【K】で表す。最初は、ピッチャーが投げたボールがストライクだった場合、【STRUK】と書いていたが、面倒だったようで【STRUK】の最後の文字を取って【K】とした説があるようだ。


そのドクターKが後、アウトカウント3つでノーヒットノーランを達成する。


ここまで9個の三振を奪った。


ゴールデンズは左打者の代打を送るが、小倉の前では成す術がない。


簡単にツーアウトを獲り、最後のバッターをツーナッシングに追い込み、最後はスローカーブで10個目の三振を奪った。


ノーヒットノーラン達成の瞬間である。


湧き上がる球場内。しかしこの歓声は小倉を称える歓声ではなく、ブーイングによる歓声だった。


「おヅラ~、テメー真面目に投げてんじゃねぇよ、ハゲ!」


「お前何で打たれねぇんだよ、つまんねーじゃねぇかよ!」


「金返せ、バカヤローっ!」


いつしか球場内は、金返せコールとなっていた。


【金返せ!金返せ!】


鳴り止まない金返せコールの中、小倉はガッツポーズをしたが、ナインからも


「空気読め、バカっ!」


「何やってんだ、テメーは!」


「相変わらず使えねぇヤツだなっ!」


「土下座して毛、剃れ!」


「Fuck you!!(泣け、このクソヤロー!!)」


「お前が勝つのが許せない!」


等、いつもの罵声を浴び、ヒーローインタビューでは、アナウンサーに

「何で今日に限ってノーヒットノーランなんてやってんだよ!オメー空気読めよ、このハゲ!」


とまで言われ、いつものように号泣しながらベンチに引っ込んだ。


勝っても負けても、ホームだろうと、アウェイだろうと罵声を浴びる男、それが小倉なのであった…


「佐久間さん、交換相手はヤツでいいかな?」


「これなら向こうさんも納得するだろうさ」


ヤマオカと佐久間はトレードの交換相手を決めたようだ。

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