09.真実!
「で、本当ところ、こっちはどうゆう状態になっているんですか?」
俺はミヤの祖母を見た。
「一言で言うとかなりヤバイ状態ね。なんでか急激に妖魔の力が増幅しちゃって、今にも結界が破られそうなの。」
「おい、そんなに時間がないのか。」
ミヤの祖母の話に俺以上に爺さんが、ビックリした顔で彼女を振り向いていた。
「まさか黒い杖を使うつもりじゃないだろうなぁ。」
黒い杖!
なんだそれ?
爺さんの質問にミヤの祖母が素直に頷いた。
「おい、何を考えているんだ。白い杖を持っているものが黒い杖を従えたら、命が亡くなるんだろう。」
「まぁ、あなたが私の事を心配してくれるなんて嬉しいわね。」
「冗談をいってる場合か。そんなことは儂が許さん。何のためにあの女を誑し込んだと思ってるんだ。」
「あの娘じゃ、黒の杖を従えるなんて百年たっても無理よ。」
「やって見なけりゃ、わからんだろう。」
「やらなくてもわかるわ。それにもう杖は、持ち主を選んだのよ。」
「おい。儂に断りなくなんてことをしたんだ。勝手に死ぬようなマネは絶対に許さんぞ。」
爺さんはミヤの祖母の肩を掴むと、すごい勢いで揺さぶった。
あまりの必死な形相に俺の方が唖然とした。
あの爺さんが動揺するなんて、どうなってるんだ。
「手を離してちょうだい。誰が、私が従えたと言ったの。私じゃなくてミヤよ。」
「ミヤ?」
爺さんの手が離れた。
「わたしのかわいい孫よ。」
「なんだと!」
爺さんの目線がミヤを向いた。
「ミヤ、杖を出しなさい。」
ミヤは祖母に言われ、杖を出した。
杖を見た途端、俺はあまりの禍々しさに体が硬直した。
ふと隣を見ると、爺さんも同じような状態のようだ。
「ミヤ。お前、大丈夫なのか?」
俺は杖を指差しながら震えた声で尋ねていた。
「えっ、なにが?」
キョトンとしたミヤが俺を見た。
「なにがって、そんな禍々しいものに触ってだよ。」
「禍々しい?別に何も感じないけど。」
ミヤの感想になんでか彼女の祖母までが、度肝を抜かれたようだ。
「ミ・・・ヤ、その杖を持っていると、どんな感じがするのかしら?」
「えっ、どんなって。これ、ただの異世界の”便利グッズ”じゃないの?」
「さすがアイリスの孫だ!」
爺さんは呆れた声をあげた。
「さすが私の孫ね!」
ミヤの祖母は自慢げだ。
「さすがミヤだな。」
俺も爺さん同様、呆れた声をあげていた。
三者三様の見解にミヤは目を丸めていた。
「とにかく、ミヤにはすぐさま黒い杖の使い方を覚えて貰って。おぼえ次第、魔物の結界を強化しましよう。」
「結界の強化?なんで妖魔を消滅させちゃダメなの?」
「はあぁ、そんなこと出来るのか?」
俺はミヤに真顔で聞いていた。
「うん。この便利グッズが出来るっていってるから、出来るよ。」
三人はミヤの答えに目を剥いた。
「どうやって?」
俺は気を取り直してミヤに聞いてみた。
「えっと、白、赤、青、黄色の大蛇を倒した後、封印されている洞窟に行って、魔物を倒すだけでいい見たい。」
彼女のあまりにもあっさりとした物言いに、なにを言われたか飲み込めなかった。
だが、飲み込んだ途端に我に返った俺は、一応そいつらが今どこにいるのかを聞いてみた。
「どこにいるっていうんだ、そいつらは?」
「ああ、場所ね。それなら、ここからちょうど4匹は東西南北の方向にいる。うーん、でも洞窟の位置は、ちょっとまだわかんないみたい。」
ミヤはあっさり場所まで言って、あっけらかんとした顔をしている。
俺は思わず額に手を当てた。
なんでこうなんとも簡単なことのように言うんだ、こいつは。
今日もあんな小さい妖魔退治に、ものすっごく時間がかかったのに。
まして、今回のその大蛇とやらは、そいつら以上にデッカクてたぶん強いんだよな。
そんなやつをそうあっさり退治出来んのか?
思わず視線をミヤ向ければ、爺さんも同じことを考えていたらしく、俺と同じようにミヤを見ていた。
「ミヤ。知らないだろうけど魔術師が使う魔法は、魔の森に入ると使えなくなるのよ。どうやって妖魔を退治するつもりなの?」
「えっ、使えないの?でも、この”便利グッズ”は使えるって言ってるよ、おばあちゃん。」
「「使えるだと!」」
ミヤは素直に頷いていた。
ミヤの祖母は、顎に手を当てるとしばらく考えてから爺さんを見た。
「明日も討伐の予定はあるかしら?」
「ああ、もちろんだ。」
「わかったわ。じゃ、ミヤ。あなたも一緒に行って、それを手伝って来なさい。」
「おい、手伝うっていくらなんでも。」
爺さんが慌てて止めようとした。
俺もミヤをあんな危険な所に連れて行く気はない。
反対しようとすると、
「本当に魔法が使えるかどうか、この街の近くの”魔の森”で試した方がいいでしょ。」
そう言うことか。
とは言え、かなり危なくないか。
俺は、やはり心配だと反対したが聞いてもらえず。
次の日にはミヤを連れて、王都守備隊の隊長がいる所に向かうことになった。