16.それから北!
翌日。
サラリと東の妖魔を倒した俺たちは、北に向かった。
一旦、爺さんの屋敷に戻るだろうと思っていたのに、なんでか俺はミヤと彼女の祖母の二人の空腹が治まると、そのまま北に向かうことになった。
それでも一応、途中の宿屋で一泊してその街で必要な荷物を買い込むことはした。
しかし、買い込みが終わるとそのまま、また北に進んだ。
北に向かうにつれ気温がガンガン下がってきて、今ではマフラーに厚手の毛皮のコートを着ていても寒い。
ミヤもさっきからガタガタと震えていた。
なんだか心配になって来た。
「ミヤ、大丈夫か?」
俺はミヤを自分の毛皮のコートでさらに包む。
「竜、もうダメ。」
それでもミヤは俺のコートの中で、さらに震えた。
えっ、ミヤが震えるってどんだけだよ。
俺は思わず前を走っている爺さんに後ろから声をかけた。
「爺さん。ちょっと休憩しないか。ミヤが寒がってる。」
「残念ながら無理だ。下手に止まると寒さで馬も動けなくなる。」
くそっ、それはわかっているがミヤの様子がおかしい。
俺は心の中でクロに話しかけた。
おいクロ、どうなってるんだ。
<そ・・・そりゃ・・・・うっ・・・さむ。>
はあぁー、なんで杖のお前が寒がる?
<南国育ちだから寒さは苦手なんだ。>
はぁ?
これからその寒さに強い妖魔を倒すのに、それで大丈夫なのか?
<ガ・・・タ・・・ガタガタ。>
杖のくせに歯をガタガタと言わせる音が伝わって来た。
杖に歯があるのか?
そんな俺の頭に回る疑問をきれいに無視して、行き成り事態が急展開した。
走っていた馬の前方が前回と同じように盛り上がり、巨大な壁が現れた。
ただし壁が見えた瞬間に周囲が猛吹雪になった。
おかげで視界がゼロだ。
それに猛吹雪の音がひどすぎてビュービューという音しか聞こえない。
ウソだろ・・・これ。
何も見えないし音も聞こえないんじゃ、敵が目の前にいたとしても認識できな・・・・。
俺はミヤもろとも衝撃を食らって、馬から放り出された。
運よく雪の上だったのでゲガもなかったが、どこに敵がいるか位置が掴めない。
おい、杖じゃなかったクロ。
どうにかしろ!
俺の問いかけを無視したクロと震え続けていたミヤの二人が叫んだ。
「もう寒すぎてやってられない!」
<同意。ファイアーだ、ミヤ。>
「炎よ、焼きつくせ!」
二人の声の唱和に周囲が熱くなった。
異常な熱風に黒焦げの自分を想像したが、次の瞬間には熱風が俺の周囲を通り過ぎ、吹雪で見えなかったはずの景色が真っ赤に染まった後、透き通るように開けた。
そこには真っ黒に炭化した山と茶色になった地面が広がっていた。
げっ、雪がない。
「はぁー、やっと寒くなくなった。」
<うむ。>
おーい、そこの二人。
何をやったのかわかってるのか。
俺の心の声は二人に届かず。
今回は戦闘に不参加の爺さんとミヤの祖母が心の声を呟いている俺の隣で、せっせとミヤの為の食事を作っていた。
いいのか討伐がこんなに簡単でぇー。
いいのかぁぁあああああー。
俺は心の中で叫び声を上げた。