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13.あれはアレだった!

 俺は喚くミヤを担いで爺さんの屋敷に戻った。


 ミヤの声の大声に気がついたのか屋敷に入った途端に、彼女の祖母が現れて物凄い目で睨まれた。


 いや、俺は誓って何もしてません。


 俺が心の中で言い訳をしていると、爺さんが現れて俺に文句の嵐を浴びせた。


「お前は、わ・・・儂の孫のくせに何をやっているんだ。」


「いや、何もしとらん。」


 それどころか巨乳のお姉さんとシッポリしようとしたのを邪魔された挙句、それでも泣く泣くミヤを担いでここまで戻ってきたんだぞ。


 誉められるのならわかるが、攻められる筋合いはない。


 俺の反論にミヤの祖母は立ち上がると、取り敢えず彼女を部屋に連れて行ってくれるように言われた。


 俺は頷くと、そのままミヤを客間にあるベッドに運んだ。


 ドサッと降ろすが本人は熟睡していてまったく反応がなかった。


 それどころが、降ろした途端に何だか背中が生温かったのがすうすうして冷たい。


 おい、ミヤ。


 もしかして、俺の背中に涎をたらしたんじゃないだろうな。


 俺はそう思って背中に手を回そうとしたが、その前にミヤの祖母に促されて隣にある応接間に連れて行かれた。


 そこにはすでに爺さんもいて偉そうにソファーに踏ん反り返っていた。


 ミヤの祖母は踏ん反り返った爺さんをトンと軽くついてそのソファーから叩き出すと、俺に目の前のソファーを指さした。


「それでどういうことなの?」

 ミヤの祖母に促されて俺は”魔の森”での魔物退治とミヤの空腹、それに隊長と副隊長のことを話した。


 二人は眉間にしわを寄せて考え込んでしまった。


 特にミヤの祖母の顔は真剣だ。


 彼女はかなり真剣に何かを考えていたかと思うと、突然、俺に袋に包まれた飴を差し出すと、明日の”魔の森”での討伐でミヤが空腹を訴えたらこれをあげてほしいと告げ、白い杖を出した後すぐにどこかに飛んで行った。


 なんだったんだ?


 俺がミヤの祖母が出て行った大窓をしばらく見ていたら、爺さんがいきなり昔話を始めた。


 なんだ急に?


 爺さん曰く、杖を使う者の多くは生体エネルギーが通常の人間より多く必要なようで、それを手っ取り早く他人から補給するのにだれかれかまわず、相手とベッドを共にするものが多いらしい。


 だから、なんだ?


 おっほん。


 急に咳ばらいをした爺さんを見てハッとした。


 おい、まさか。ミヤがあそこでしようとしていたことは、俺のゴカイ、いやいや誤解じゃなく隊長たちが正しかったと言いたいのか?


 呆けた顔をした俺を見た爺さんが珍しく慰めてきた。


「まあ、あくまで仮定じゃ、仮定。真実は本人にしかわからん。取り敢えず明日も同じように”魔の森”に向かえ。」

 俺は素直に頷いた。


「ああ、それと・・・。」


「ああ、わかってる。隊長たちには絶対に手出しはさせないよ。」

 俺はいいづらそうにしている爺さんにそう返した。


 どちらにしろ、今日はもう寝よう。


 本当に疲れた。


 俺は爺さんに背を向けて自室に向かった。


 それにしても、今の話が本当ならミヤの空腹が満たされるまで彼女から目を離さないようにしないと、それこそ目も当てられない事になる。


 なんだかまた巨乳のお姉さんとのお楽しみが遠のいて行く気がするのは、気のせいでなないんだろうな。


 いや、ここは考えたらダメだ。


 取り敢えず、今は休むことだけを考えるんだ。


 俺は無理やり毛布を被ると、そのまま目を閉じた。



 翌朝、いつも通りに目を覚ますと屋敷の庭で体が鈍らないように素振りをしてから食堂に向かった。


 部屋に入ると、爺さんと昨日どこかに行ったミヤの祖母がそこにいた。


 どうやらミヤはまだ来ていないようだ。


 俺は二人に挨拶した後、置かれていた食事に手を付けた。


 ちょうど全員が食事を終えた頃、ミヤが食堂に現れた。


「おはよう。お腹空いたぁ。」


 いや、そこで言うセリフは食欲がないだろう。


 俺の脳内突っ込みとは逆に、ミヤはお腹を鳴らしながら席に着くと、目の前に置いてあった山のような量の食事をあっという間に完食した。


「はぁー、やっと人心地。」

 そこに目の前に座っていたミヤの祖母が彼女に何かを手渡した。


 俺が昨日貰ったのと同じ緑色に光る飴玉のようなものを手に取って、黙って眺めるミヤ。


「おばあ・・・。」


「それはいわゆるこっちの世界のカロリーメイトよ。」


「カロリーメイト。」


「そう、空腹になったら食べなさい。それと言い忘れていたけど、そのミヤが持っている杖に名前を付けなさい。」


「名前?」

 ミヤは少し考え、すぐに口にした。


「じゃ、便利グッ・・・。」

 ミヤの言葉が終わらないうちに彼女の祖母がそれを遮ぎった。


「犬にイヌっていう名前を付ける。」


 ミヤはハッとして黙ると、良しと言う顔で宣言した。

「じゃ、クロね。」


 そのまんまじゃないか。


 三人の目線が合ったがさっきの便利グッズよりましかと思った。


「で・・・杖はなんて言ってるの?」


「クロで良いって。」


 ホントかよ。


「あっ、そうそう。それと昨日おばあちゃんに聞かれたソーセージの件だけど、高カロリーなら別にソウセージじゃなくてもいいって。でも、なんなのソーセージって・・・。」

 ミヤは出した黒い杖に問いかけてしばらくすると、真っ赤になっていた。


 次の瞬間に、黒い杖を床に叩きつけるとガシィガシィと足で踏みつけた。


 やっぱりあれは、アレだったんだ。


 俺達はミヤが黒い杖をしこたま踏みつけた後、それを本気になって投げ捨てようとしたのを全員が全力で止めた。


 今日も朝から疲れる一日の始まりだった。


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