12.ちょっと待った。
ミヤの食欲が普通に戻った頃、やっと俺も彼女から視線を外して巨乳のお姉さんが持って来てくれた酒に手を出した。
お姉さんがしなだれかかって俺の耳元に囁いてくれた。
「他の場所に行かない?」
行きたい。
非常に行きたい。
だが、しかし、今のこのムチムチさんが腕に当たっている状態を隣にいるミヤに知られたら、何を言われるか・・・。
俺は腕にさわるムチムチ感を心の中で堪能しながら、そっと隣で食事をしているはずのミヤに視線を送った。
ところが、そこにミヤがいなかった。
あれ?
隣には空っぽの椅子があるだけだ。
おい、あいつはどこ行った。
俺が隣を見て周囲をキョロキョロしていると、目の前で酒を飲んでいた守備隊のオッサンがどうしたと聞いてきた。
「いや、ミヤがさっきまでここにいたはずなんだけど・・・。」
「ああ、黒い杖のお嬢ちゃんかい。それなら、隊長と副隊長が今、ほら、上に連れて行くところだぞ。」
「うえ?」
俺は視線を階段に向けた。
見ると両脇を隊長と副隊長に支えられながら階段を上るミヤが見えた。
なんで上に向かってるんだ?
「あら、さすがあなたの連れね。3Pなんて、うふふふ・・・やるわね。」
ちょっと待て。
3P。
やる。
やるって、あのやるか?
いやミヤ、お前処女だろ。
なんでそうなってる。
俺は巨乳お姉さんの胸から腕を取り戻すと、慌てて後を追った。
近づくと三人の会話が聞こえてきた。
「おいしいの、それ?」
「ああ、美味いよ。」
「俺達のソーセージ。大きいし食べごたえがあると思うよ。」
おい、そのオッサン二人。
にやけきった顔でなんてことをミヤに言ってやがる。
俺は階段をイッキに上がって通路を進もうとしたミヤの腰に後ろから手を回して、二人のオッサンから引き離した。
「おい、ミヤ。何やってる?」
「あれ、リュウ。なんでここにいるの?二人にね。巨大ソーセージをご馳走になるんだよ。」
ミヤに酒臭い息を吹きかけられた。
こいつ、いつの間に酒なんか飲んだんだ。
てっ言うか、隊長も副隊長も何を考えているんだ。
ミヤは未成年って、こっちじゃもう成人してるけど。
酒はまだしも、なんでベッドに連れて行こうとしてるの?
俺はミヤの腰に手を回したまま、二人を睨み付けた。
「おいおい、竜。悪かったよ。お前に声をかけなかったのわ。それじゃ、これから、4Pしような。」
隊長はそう言って、俺の反対側からミヤの腰を掴もうとした。
俺はミヤを抱えて、後ろに下がった。
「隊長。ミヤはまだ俺の世界じゃ未成年なんで、ベッドに連れ込まないで下さい。」
「はぁあ、だがさすがに野外は不味いでしょ。」
なんでここで野外が出てくるんだ?
「それとも、黒い杖の持ち主は外じゃないと燃えないの?」
副隊長の言葉に俺は頭を抱えた。
なんか話が噛み合ってない。
「えー、まあだぁー。ソーセージ!」
ミヤが呂律の回らない声で隣で叫んでいた。
「そうだよね、ミヤちゃん。」
副隊長がミヤに手を伸ばしてきた。
そうじゃない。
「おい、ミヤ。お前の欲しいのはそのソーセージじゃないだろ。」
俺の声に、ミヤはキョトンとした顔でただ見上げてくるだけだ。
ああ、もういい。
俺はミヤを肩に担ぎ上げると、もうこんな事をしないでくれと隊長と副隊長に怒鳴り、そのまま階段を駆けおりてチラッと先程のお姉さんに視線を投げかけてから店を後にした。
なんでいつもいいところでこうなるんだ。
俺は、肩の上でソーセージを連呼するミヤを抱えて屋敷に向かった。
くそっ、今日も厄日だ。