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10.魔物退治!

 次の日。


 俺はミヤを連れて、屋敷の近くにある王都守備隊の所に向かった。


 魔物退治は基本、昼近くに魔の森に向かって行うので、こんな朝早くにはほとんどの守備隊の面々は、夜勤についているもの以外まだいないはずだ。


 俺はミヤを連れて、普段、守備隊員が訓練している中庭に向かった。


 中庭では都合がいいことに守備隊長が朝練をしていた。


 俺が近づくと気がついて素振りを止めてくれた。


「めずらしいね。リュウがこんなに朝早くここに来るなんて。」

 守備隊長はそのまま俺を見て、すぐに俺の後ろにいるミヤに気がついて眉を竦めた。


「リュウ。一応、ここは守備隊だから恋人を連れてくるのはダメだよ。」


「恋人って、違います。」

 俺はハッキリ首を横に振った。


「そんなに嫌そうに否定しなくても良いのに・・・。」

 ミヤが隣で何かボソボソと呟いていたが、俺には聞こえなかった。


 俺は、当初の目的であるミヤを今回の魔物退治に連れて行ってほしいと隊長に話した。


「はぁ、無理、無理。いくら魔術師でも”魔の森”の中じゃ魔法が使えないんだ。危ないからダメだ。」


「使えますから大丈夫です。」

 ミヤが何度も隊長を説得しようとするが、彼はガンとして耳をかさなかった。


 やっぱり無理だと俺が言おうとすると、中庭にやってきた副隊長がミヤを見て、俺達に声をかけてきた。

「へえー、魔術師なんだ。それで何の魔術なの?」


「えっと、何のって?」


「ああ、だから。そうだな、どんな魔法を使うのかってことだよ。」


「えっと、聞かれていることがいまいちわかんないんですけど、私はこれを使ってます。」

 ミヤはそう言うと、黒い杖を出した。


 途端、隊長も副隊長もその場に固まった。


 しばらくすると二人は顔を合わせて叫んだ。


「「伝説の黒い杖!」」


「えっ、伝説?」

 ミヤが二人の叫びに聞き返した。


 確かに伝説って聞こえたけど、どんな伝説なんだ?


「ああ、知らないのか。黒い杖は、世界を滅ぼせるって言うのを聞いたことがない。」


 なんだ、それ。


 爺さんは、そんなこと言ってなかったけど。

 俺は隣にいるミヤを見た。


 ミヤは、二人の言葉を気にした風もなく、

「じゃ、”魔の森”に一緒に言っても大丈夫ですよね。」

 と”ね”に力を込めて聞いていた。


 二人はミヤの推しに、結局、首を縦に振った。


「じゃ、お二人ともよろしくお願いします。」

 ミヤは手を差し出した。


「ああ、よろしく。」

 二人はそれぞれミヤと握手する。


 ミヤは二人と握手した後、俺にお腹が空いたと言い出した。


 はぁ、空腹ね。


 俺は副隊長を見た。


 副隊長は俺の視線を受け止めてミヤについて来るように言うと、俺達を食堂に案内してくれた。


 ちょうど朝食と昼食間だったので、食堂は人もまばらだった。


 カウンターを見ると、残り物で作ったごちゃ混ぜ野菜炒めと食パンが大きなお皿にのせられていた。


 副隊長はその皿をそのままドサッと持ってくると、俺達の前に置いた。

 ミヤもいつの間にかバスケットに入っていたパンを手にしていた。


 俺も立ち上がってバスケットからパンを手に取ると、ごちゃ混ぜ野菜炒めと一緒に食べ始めた。


 パクパクパク。

 パクパクパク。


 モグモグモグモグ。

 モグモグモグモグ。


 あっという間に大皿に乗っていた料理がなくなっていた。


 俺はいつものことだが、ミヤはこんなに食べただろうか?


 ふと隣で食べているミヤに視線を投げれば、まだ物足りなさそうだ。


 おい、まさか。


 まだ食べるのか?


 俺がそう思って見ていると、ミヤは立ち上がることもなく魔法でカウンターに置かれていた肉の大皿を目の前に運ぶと、それをガツガツと食べ始めた。


 げっ、なにその勢い。


 俺が隣でかなり引いているのにも気づかないようで、それをあっという間に平らげていた。


「ああ、美味しかった。やっと食べた気がしたよ。」


「食べた気がしたって、まさかまだ食べ足りないのか?」


「うん、だけど腹八分目っていうし、この辺で止めとくよ。」

 ミヤはそう言うと、今度は立ち上がって傍にあったジョッキに水をなみなみと注ぐとテーブルでそれを飲み始めた。


 ごくごくごく

 ゴクゴクゴク。


 プハァー


 しばらく飲み続けてからやっと大きなジョッキから口を離した。


「うーん、満足かなぁ。」

 おい、ミヤ。

 お前、明らかに食べ過ぎだぞ。


 ふと目の前に座る副隊長に視線を向けると、彼は財布を握りしめて遠い目をしていた。


 これは爺さんのつけにしておいた方がいいな。


 俺は席を立ってカウンターに向かうと女将を見つけて、自分たちが食べた料理の請求書を爺さん宛にしてくれるように頼むとまた席に戻った。


 そこで意を決してミヤに問いかけた。

「おい、ミヤ。いくらなんでも食べ過ぎだぞ。」


「うん、それなら大丈夫。”便利グッズ”がいくら食べても太らないって言ってるから問題ないよ。」


 おい、気にするのはそこなのか?


 俺は気力を奮い立たせてもう一度ミヤに注意した。

「太る太らないじゃなく、体調が悪くなるだろうが。」


「えっ、それ。でもそれ無理。」


「なんでだ。」


「これ持ってると何もしなくてもこれに魔力を捕られて、お腹が空くんだ。」


 それかよ、あんなに食べた理由は!


 俺は、通常でこれなら魔力を使ったらどうなるのかと考えてしまい、副隊長と同じように遠い目をしてしまった。

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