正義の味方はホームレス その三
尚武の力の原因がベルトであると気がついたのは夜の水浴びの時だった。裸になり蛇口を捻ろうとしたときに想像していた力ではまったく動かなかったからだ。
体を拭き終わった後に服を着ても変わらなかった。だがあの不思議なベルトを腰に巻くとまったく抵抗も無いかのようにくるりと蛇口が回ったのである。
理由は分からないが原因が分かると尚武はベルトを持ち歩くことにした。常に腰に巻かないのは何が起こるかわかったものではなく、場合によっては怪力で物を破壊したり人まで殺す可能性があったからだ。だからといって使えないものではないだろう。
事件は翌日に起きた。
何事も無いような昼、広い道路の横を尚武はジャンパーに身をすぼめて歩いていた。昨日よりも寒く感じるのは単純に服が違うからだろう。一番暖かいセーターは昨日破って少年達を縛るのに使ってしまった。
とりあえず家……ダンボールだが、戻ったら一枚多めに羽織ろうと尚武は誓った。
あのベルトはポケットに仕舞っていた。変な話だが丸めたらコンパクトサイズになったようだ。これなら簡単に持ち運べるだろう。
昼に出歩いている理由は単純に飲み物の調達である。
食べ物は店のゴミ箱を明るいうちに探すと怒られるので日中はしない。だが飲み物なら比較的問題なく探すことができる。自販機隣のゴミ箱は探しても苦情になりにくいからだ。散らかさなければ案外問題なく飲み物を得ることができる。
だから、縄張り内の飲み物を尚武は探していた。そして大きな交差点の前につくと、この先の回るルートのことを考えた……
「…………うおっ!」
すると、突然ドンと地面が跳ねた。
それは、大きな地震だった。
怖くなり尚武はとっさにしゃがんだ。女性の叫び声が響いた。頭上の電線が落ちては来ないかと心配になった。まさか地震の原因はロキとトールが暴れたからだとは考えもしなかった。
だが地震は収まる。電線も切れていない。さすがは地震大国だと尚武は感心した。まったく何もびくともしていないようだった……
途端に、前でドンという衝撃音が響いた。
音の方を尚武が見ると、交差点の真ん中で二台の車が止まっているのが見えた。大型の引越し用トラックと、白い乗用車だった。だが乗用車のボンネットは垂直にトラックの荷台へ突き刺さっていた。そして運転席が圧迫されているのが遠目でもわかった。
誰か、スーツ姿の若者が駆け寄るのが見えた。
「大丈夫か!」
絶叫に近いような叫びで尚武は我に返った。他の人達も駆け寄って来る。咄嗟に尚武はポケットのベルトを握ると急いで腰につけた。




