表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アースガルズの私様  作者: 富良野義正
放送主達の黄昏
62/163

放送主達の黄昏 その二

 arcsin(アクシン(配信主)の黄金期


 黄金期といえばまるで一番盛んなようにも思えるが、ここでは一番楽しかった頃と言ってもいいだろう。コミュニティのレベルは低く、放送をしてもそこまで人が来なくてコミュニティ登録もしていない時代だ。


 少女のハンドルネームはarcsin(アクシン)と言った。アークシンでもアークサインでもない。


 一部では昼間でも見えるSDKえすでぃーけいJSと根強い人気があった。配信内容はゲーム実況や踊ってみた、歌ってみたであり、ごくありふれた配信内容だともいえる。


 幾らかのタイムシフトがアップロードされているが、これはその一つである。

 画面の中央にはなにやらグロテスクな怪物と、血が飛び散っていて、その右下にはカメラに映された少女の姿が映っている。


『このゲーム12禁だけど小学性がやっていいの?』


 既にリスナーの間ではアクシンは不登校の小学性で引きこもりのゲーマーということになっていた。


「だから小学生じゃねえって言ってるじゃねえか……」カチカチというマウスの音が響く。「おい! ちょっとま、待てって! おい! まじかよ……また死んだじゃねえか!」

『へたくそwwwwww』『wwwwwwwwww』『wwwwwwwww』


 何てことだ! 画面は『w』の文字で埋め尽くされているではないか! 


「何笑ってんだよ、屑共が! 私様は面白くねえんだよ! あの触手の配置がなあ、テストプレイしてんのかよ!」


『小学生には難しすぎない?』『アクシンへの触手攻め想像した』『触手もっと頑張れ』

「てめえら何触手応援してんだよ! ってかなあ、触手に攻撃されたのは私様じゃないからな! トムとかいうおっさんだからな!」


『トムでもいける』

「いけるじゃねえよ! っつたく、どこでセーブしたっけなぁ……」


 またマウス音とキーボードの音、当り触りのないようなアクシンとリスナーとの会話が続く。




 他にもアクシンは他の生主と共に声優のようにキャラへ声を当てることもやった。今でも動画自体は残っている。教室の隅にいる暗闇の支配者の少女の役はアクシンだ。そのまったく演技力も無いような声は動画の素人さというものを更に際立たせたのだろう。


 このようにアクシンの黄金期はむしろ表舞台とはもっと別の場所だった。いや、暗い瞳でぼさぼさ髪の少女は、暗い闇でこそ栄えを見せるのかもしれない。


 だが偶然は少女を表舞台に引き摺り出す。例えそれが黄金時代を壊し、黄昏へと向かうような運命であっても。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ