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アースガルズの私様  作者: 富良野義正
名状し難き冒涜的なアースガルズの神様
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名状し難き冒涜的なアースガルズの神様 その十一

 誰よりも早くコールは逃げ出す。後ろを三人も駆ける。後ろを見れば。遠くにあの禍々しい姿が見える。


 言われた通り、コールは階段を発見する。すると遠くから、あの歌声が聞こえた。あの呪わしい、名状し難い言語の……ブラギの歌が!


『父たる偉大なオーディンの

 母たる偉大なフリッグの

 古代より繁栄するアースガルズは

 4つの生贄により 地上へと蘇る

 いあ! いあ! オーディン!

 いあ! いあ! フリッグ!

 4人の生贄の魂は黄金を生み繁栄をもたらす

 金色こんじきに立つのは四人の偉大なる神々

 ミョルニルを両の手に持つトールと

 白銀の剣を左の手に持つテュールと

 偉大なる黄金の文明を歌うブラギと

 混沌と邪悪で冒涜的な悪神の

 偉大なる旧支配者達は魂を糧に

 天に栄えし古代のアースガルズより

 地上へと舞い降りるだろう!

 いあ! いあ! トール!

 いあ! いあ! テュール!

 いあ! いあ! ブラギ!

 いあ! いあ! いあ! いあ!』



 ああ、なんと禍々しい!


 この歌はまさにコール達の魂を歌っているのだ!


 名状し難いアースガルズの神々はついにミズガルズへと降り立ったのだ! そして生贄の魂を糧に復活を果たそうとしているのだ!


 階段を降りぬくと、地下には長く続く乾き切った下水がある。辺りには暗くも松明の明かりで照られている。その不浄な場所をコール達は走りぬける。


 突然前は開かれて、広い空洞に出た。

 途端に凄まじい光にコールの視界は完全に遮られるほどだった。


「……なんだ、これは……!」


 自分に言い聞かせるようなロビンの声をコールは聞いた。そして皆もため息のような、驚嘆のような、又は歓喜のような声をあげた。


 広い空洞には、凄まじい量の金塊が積まれていたのだ!

 まるで廃棄処分場のゴミのように、黄金の均一な棒が詰まれている。その量はあまりに異常だ。一国でもこれほどの黄金など所持しているものではないだろう。


 だがその驚嘆も、金属を擦る音に全てが恐怖へと変わる。

 金塊の金色こんじきに黒い影を作るように、混沌を固めたような存在がそこにいた。


 なんということだ! それは、間違いなくあのトールではないか!


 するとまた、あの恐怖の眩暈が襲って来る……だめだ、呪わしい姿を見てはいけない!


「逃げろ! 早く、逃げるんだ!」


 コールの叫びに皆も現状の狂気を飲み込んだようだ。黄金だらけの下水をコール達は走り抜けた。


 すると黄金の山の向こうに、白く建物のような影が見えた。そして水の音も聞こえるではないか!


 おお……先に見えるのは、地下の船着場ではないか!


 そこにある真新しいクルーザーにコール達は乗り込む。振り返ると黄金の中でトールが嘔吐している。とにかく眩暈から逃げるようにマドンナがエンジンをつけた。そしてクルーザーは凄まじい勢いで動き始めた。


 先に待つのは、暗い岩の洞窟だった。それもすぐに抜けると、先には波と星空だけが広がる海が広がっていた……

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