二次元の嫁暗殺計画 その十
10億円の為に自分で自分の作品を殺したことを政樹は分かっていないわけではなかった。インターネットでは掲示板やツイッ〇ーに最終回までの三話が伝説的にカオスな糞回だと書かかれていて苦情や嘆きの手紙を受け取った。
自分のしたことがどれほどファンを傷つけたのか、政樹は知らないわけではない。『ホワイトパワーガールショック』と呼ばれる一連の出来事がファンの中では黒歴史扱いされ、公式サイトでは『ホワイトパワーガール フルパワーズ』が無いものにされたほどだった。
例の回も無いことにされ続きを描くように編集に政樹は言われていた。不思議なことだが一連の異常さを理解しているファンが政樹に同情しファンレターさえ送って来たのである。消せない汚点を残してしまったというのは確かなのかもしれない。だがその反作用により『ホワイトパワーガール』の知名度は恐ろしくあがり、被害者としての織田政樹の知名度もあがったのである。
しかし、次回の話から担当の漫画家が代わることが決まった。
というのは、政樹がそれどころではないからだ。
政樹の前には、10億もの金が並んでいた。この金は、政樹が一生描き続けても得ることの出来ないような……いや、一般のサラリーマンが一生かけても手に入れることのできない金だ。
「ふ……ふふ……ふふふ……」
口元を政樹は綻ばす。そしてぐっと拳を握り、満面の喜びを溜める。
怪しげな少女達は一連の話を描き終えると、まるで何でもないかのように政樹の前にアタッシュケースを置いたまま帰ってしまった。それから一ヶ月住所を変えても追って来る気配は無い。
「ふふ……やった……やった、やったぞおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
耐え切れずに政樹は大声で叫んだ。もはや政樹の脳裏には、ファンを裏切った気持ちも、自分が漫画家であるという思考も存在していない。ただ自分は、勝利者だった。10億もの資産を持つ勝利者だったのだ。
「この金は俺のものだぁぁぁぁぁぁぁ! やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! ひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
その束を掴むと喜びのあまり政樹はそれを宙へと投げた。束から外れた金がばらばらと政樹の上に落ち10億の使い道が彼の脳裏の中を沢山駆け巡った。
それから政樹の後を次いだ『ホワイトパワーガール』は細々と連載を続けて終わったが、引き継いだ漫画家の次の作品『バスターマン』が大ヒットし、10億を軽く超える収益を得た。一方の政樹は10億を一年で使い果たし、すぐ後に税金に関することで市役所に睨まれることとなった。




