F5攻撃ラグナロク その一
アースガルズの宮殿から離れた深い森の奥、昼の光さえ届かないような忌まわしい場所がある。そこに好んで住まうものはいるのだろうか。
いや、たたずむ小さな家の中に明かりが見える。こんな陰険な場所に好んで住むのは、ニヴル・ヘルの亡霊や忌まわしい巨人を除けば一人しかいないのだろう。
黒髪の少女はパソコンを前にしれキーボードとマウスを動かす。『メシアクエストオンライン』のメンテナンスが1分前に迫っている。狩りのアイテムを売り終えたことを確認するとクライアントを落とす。そしてため息を吐く。もう大分飽きてしまったがすることがない。別にメンテが早く終わって欲しいわけではないが他にやることもない。
「退屈だ……糞が……仕方ない、ミズガルズでネットサーフィンするか? いや……今日は嗜好を変えてみるか」
何ともなくロキはアースガルズの検索サイト『検索サイトアースガルズ.com』に接続する。あまりこのサイトをロキが利用しないのも当然で、アースガルズでのパソコン技術は遅れているのだ。このページでさえHTMLで適当な黄金背景に検索用の入力がついただけのサイトである。カテゴリー検索さえついていないのはもはや質の悪い個人サイトにしか見えない。
このサイトにも利点が無いわけではない。それぞれのブログや日記に繋げられるのである。これにより酷く下らないようなプロフィールやツイッ〇ーにも劣るような呟きも見られるのだ。小人が適当に作ったものであるのは確かだが、アースガルズでブームになったのをロキが嘲笑したのは記憶に新しい。
「しかし、いつ見ても糞みたいなサイトだ。初期のヤ〇―を見習ったらどうだ……ともかく脳筋幼女のサイトでも見てみるか」
だがトールの名を打ち込み検索ボタンを押してもまったくゲージが進まない。あまりに重さにロキは顔をしかめる。遅れているのはネット技術だけではなくサーバーもであることを知っていた。
10分ほどミズガルズのサイト『メシアクエストオンラインWIKI』を眺めると、ロキはまた『アースガルド.com』のブラウザウインドを開いた。だがその画面に映っているのは、『ニヴル・ヘル.com』のTOPである。
「…鯖、死んでんじゃねえか」
ミズガルズ以外の国では、インターネットのサーバーに接続できない場合にロキの娘であるヘルの創った『ニヴル・ヘル.com』に転送されることになっている。そこには死んだサイトを検索するエンジンがついていて、タブ検索やカテゴリー検索のみではなく、オークションや天気予報、地図などの様々なサービスがついている。メールサービスもある。バルトルが死んでも安心だろう。
「やっぱアースガルズは糞だな。死んだ者のことなどどうでもいい。さてウィキウィキと……」
このとき策略家であるロキはまったく気がついていなかった。これがまさか、ラグナロクの前兆であるなどとは……




