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アースガルズの私様  作者: 富良野義正
呪術少女トール メギン
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呪術少女トール メギン その六

 何の変哲もないアースガルズの神様だったトールはある日、カースド★ロッドに不思議なパワーを与えられ魔法少女となった。

 さて、今日のトールちゃんはどうしてるのかな?



「呪術少女トール★メギン 第 繝。繝シ繝ォ 話 『繝シ縺ョ逧』」




 今日もトールちゃんはアースガルズよりもっと下のムスペル・ヘイム近くまで自慢のバイク『トリプルタング』をぶっ飛ばしてきちゃったぞ★


「この辺りだ……この辺りで巨人さんの助けを呼ぶ声が聞こえるぞ……」


 既に変身しているマジカル★トールちゃんが暗い草原を歩いて行くと……何と! じめじめした薄暗い湿地の奥に巨人さんの骸骨が転がっているではないですか!


「お前か、俺を呼んでいたのは。巨人さん、貴方はどうしたのかなかなかなかなか?」


『ああ、トールちゃんが本当に助けに来てくれた! 助けてトールちゃん! このままじゃ成仏出来ないの!』


「巨人さん、どうしたの、言ってみてみてみてみてててててて」


『実は私、トールちゃんに死んで欲しいって言いたかったの。だって、この場所知ってるでしょ? 私、貴方が散々追い回した挙句、ミョルニルで一撃に潰されたの、だから貴方死んで死んで死んで死んで呪う呪う呪う呪う』


「そうしてやりたい所だが、俺はまだ救わないといけない巨人さんが沢山いるんだ。だから、他の望みにしてくれないか?」


『違う、違う違う、私の望みは貴方に死んで欲しいと、呪っていると伝えることだったの。だからもうニヴル・ヘルに行くことが出来る。だって、旅立っちゃったらラグナロクになっても私の呪いを伝えられなかったから。ありがとうトールちゃん、もう大丈夫』



 ああ……何と冒涜的な魂なのだろう。骸骨から出て来た巨人の霊はミョルニルで粉砕された丁度その状態の姿だった。けどモザイクがかかっているから運営さんにも十分優しい、配慮されてるね★


「バイバイ! 巨人さん! さよなら! アース神族に死の鉄槌を! オーディンにフェンリルを!」


『ばいばい! くたばってね、トールちゃん★ トールにミズガルズの大蛇を!』



 ああ、モザイクのかかったままその魂は空へと飛んでいったね。きっと川を下ってニヴル・ヘルにまで行って、そして神々の黄昏でアースガルズを滅ぼす兵士の一人になるんだろうね。やったね、カースドロ……マジカルトールちゃん!


「ミッション完了! これでアース神族の敵が一人増えたね、やったぁ!」



 いつも通り彼女の頭上に『WIN』という黄金の文字が現れたぞ!


 だけどこの時トールちゃんは気がついていなかったのです。これからこんなことになるという事に。



「……ちょっと待て、ナレーション。どういうことだ? こんな古典的な引きなんて、このカースド★ロッドちゃん、知らないんだけど」


 そう言ってトールちゃんはキョロキョロと暗い草原を見渡します。けど、別に何も変わりません。大体、『繝シ縺ョ逧』という話なのにそんな変わったことなんて起こるわけがないんです。




「よくやってくれたな、マジカルトールちゃん」



 そこに、パチパチという拍手が静かな荒野に流れました。そうです、この姿を変えられる巨人さんなら五メートルくらい離れた場所に突然現れるのも頷けちゃうのです。



「だから私様のことを巨人って言うな! ファァァァァァァァァック!」

「ああ、悪神か。どうした、こんなところに」


 そうです、この人は悪神ロキさんです。巨人さんに味方をする、いい巨人さんなのです。



「ああ……もういい……しかし、よくやってくれたではないか、マジカルトールちゃん。おかげで私様の計画は完全に成就した。本当によくやってくれたな」


「……どういうことだ、悪神よ」


「ククク……既に隠す必要もあるまい」



 悪神さんが手を前に出し何かを呟くと……ああ! 何ということ! あの呪うべき真っ白な光が、あの悪神ロキから放たれるなんて! そしてロキの服装が……うわっ、真っ白なローブと白い古代の服とかマジ似合わねえって!



「フン、まあこんなものさっさと脱ぎ……違う、ククク……これこそが私様の真の姿。アースガルズの最高神、オーディンに仕えるロキ様よ」


「な……どういうことだ、悪神ロキよ!」


「悪神ロキと私様を呼ぶとはカースド★ロッドであると隠す気無いではないか……まあいい。つまり私様はお前を利用してアースガルズの為に働かせたのだ。アースガルズが力を更に高めるには各地に散らばる様々なアース神族に対する怨念が邪魔だった。だから、私様は考えたのだ。魔法少女を使い、各地に散らばる悪霊をニヴル・ヘルに送ることを。そして見事お前達は巨人の為だと言いながら悪霊を開放していった。おかげで十分すぎるほどオーディンの力は強まったのだ。感謝するぞ。さあ……お前は用済みだ!」



 ああ! 悪神さんがローブの下に隠し持っていた忌まわしいヴァルキリーの矢を振りかぶって投げるなんて! 手で投げられた矢はくるくる回ってマジカルトールちゃんの大分手前に落ちてしまった! ついトールちゃんは少し屈んでガードする。だって、矢からオーディンの力が感染するのかもしれないのだから、ばっちい。



「やめて! 元のアース神族を嫌ってる悪神に戻って!」


「戻ってだと? 私様は元々こうなのだ。カースド★ロッドよ、まだ騙されたことに気がつかないのか。さあ、もう一本くらえ!」



 こんなことって! 悪神ロキの投げたヴァルキリーの矢がトールの方に向かって投げられて、もう一度大分手前に落ちてしまった! オーディン菌が移っちゃう!



「悪神ロキ! 貴方は……貴方は本当にアースガルズに仕えているの!」


「ふん! 仕えているのではない! そもそも私様はアースガルズの神様なのだ。私様の目的はたった一つ……アースガルズの繁栄だ!」


「悪神ロキ……ううん、アースガルズの神ロキ! 俺を……俺達を、魔法少女全員を騙していたなんて、許せない!」



 ショックから立ち直ったトールちゃんは『アースガルズの神ロキ』をぐっと睨みつけた。そうだ、全部こいつのせいなんだ! オーディンが巨人の魂が永遠と苦しむように墓標にルーンを刻んだのも勝利の剣の試し切りで何人もの巨人がニヴル・ヘルに送られたのもヨトゥン・ヘイムで野菜の値段が少しあがったのも、全部ロキのせいだったんだ!



「おい! 全部私様は関係ないのではないか……じゃなかった……ククク、今更気がついたか! そうだ! 全て私様がアースガルズの為に企てた策略なのだ!」




 次回予告


 ついに正体を現した『アースガルズの神ロキ』!

 全ての悪い出来事がロキのせいだったなんて!

 けどロキさえ倒せばアースガルズは滅びるってことだよね!

 さあ、みんな! 協力してロキを倒そう!


「次回 呪術少女トール★メギン 最終話 『そ繝シ繧』」

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