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アースガルズの私様  作者: 富良野義正
呪術少女トール メギン
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呪術少女トール メギン その四

呪いは伝染する。その伝染の速度に気がついた時には呪いはアースガルズを覆っていた。




 あれからロキはトールが家に来ないので放っていた。いつものようにネトゲに勤しみ、面倒だったのでまったく外に出ることもない。大体のものはシギュンが持って来るし通販が発展している今アマ〇ンで注文すれば大抵のものは翌日には揃うのである。

 しかし、だからこそ引きこもりがこんな形で終わるとはまったく思ってもいなかった。



「どういうことなのだ……何故シギュンが来ないのだ……くそ……カップ麺がもう切れるではないか……ってか、宅配も来ないではないか……アマ〇ンの速達さえ来ないではないか……」



 兵糧攻めに案外ロキは弱い。イズンの林檎さえも届かず、非常食のアイスクリームさえ全部食べきってしまっていた。


「なんだ……どういうことだ……ファ〇ク……くそ、叫ぶ気力も無いではないか……買出しとか、マジでいかないといけないのかよ……マジで、シギュン、ってか婆も来ないのかよ……マジで……」


 既にコーヒー一杯で二晩過ごしたロキは既に限界であった。こうなったら、もはやプライドを捨てて外に出なくてはならない。


「くそ……しかしお腹が空いたのだ……空腹ならば……空腹ならば……」


 小さな体を奮い起こし、風呂に入る気力も着替える気力も無いロキは、何とか自慢の靴にだけは履き替え。その魔力で強引にアースガルズの宮殿付近に向かった。


「くそ……しかし、朝日で融ける……ってか、マジで陽射しがきついぞ……くそ……ふらふらするってか、辺りが白いではないか……」


 既にロキの気力の源は空腹ばかりだった。しかし、それも少女の体には限界があった。そもそも限界まで引き篭っていたロキが暗い森を抜けアースガルズの商店街にまで歩けるわけもなかったのである。


 ついにロキはその場に大の字に倒れた。

 そして倒れると、仰向けになり……


「ファァァァァァァァァァァァック! 何故私様がこんな目に合わなくてはならないのだ! ってかお腹空いた! マジでお腹が空いたのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! もう動けないのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 喋る気力もないのだというのに何故誰も来ないのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! くそ! 私様もアースガルズの神なのだぁぁぁぁぁぁぁぁ! もうくそ不味い山羊の肉でも何でもいいから食べさせるのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 何と言うことだ!

 案外叫ぶくらいの気力が残っているではないか!

 しかし叫びが誰に届くわけでもないことをロキは知っていた。ここはアースガルズなのである。ロキの叫びを聞き入れる神など最高神しか居ないのだろう。そしてオーディンの施しを受けるくらいならロキは餓死を選ぶのである・


「私がぁ来たからぁ、大丈夫ですよぉ」


 突然、ロキは覚えのある声に驚いた。そして割と余裕はあったので、くるりとその声の方を見た。


「……は?」


 そこには、確かにブラギが居た。しかしその格好がおかしい。あの古代ローマのような古めかしい衣装ではない。いや、元の方がいいと思えるくらいに妙に明るい青々としたひらひらの服装で、胸には可愛らしい髑髏の飾りがあった。まさにそれは、朝にやっているような子供向け番組に登場するような……魔法少女の恰好であった。



「巨人さんのぉ叫びにぃ参上ぅ★ヨトゥン・ヘイムのぉ歌い手詩人★マジカルぅブラギちゃん、ただ今降臨ぅ★」


 ロキは、このまま餓死したほうがいいのではないかという感情に襲われた。少なくともこのブラギがどうしてこんな恰好をしているのか、手にしているステッキで全て理解していた。

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