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アースガルズの私様  作者: 富良野義正
オンラインカードゲームは『基本』無料
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オンラインカードゲームは『基本』無料 その四

 主催者が誰であるか明かされていなかったが、実際はロキ以外の参加者は全員知っていた。それはフレイアファンクラブの中でもより熱心にフレイアグッズを集めているスリュムである。彼女にとっては同胞であるフレイアファンクラブの会員からであろうとフレイアグッズの全てを奪いたいほどであったし、ましてや会員でもない者がサーバーの90%以上のフレイアを持っていることを腹立たしく思っていた。しかしゲームの中では槌を盗むことさえ叶わない。ならば、圧倒的に有利な条件で勝負を挑めばいいのである。



 一ヵ月後の大会当日もロキは何の躊躇いもなく広場へと現れた。

 そしてスリュムも含め集まった十五人の前に立ち塞がった。

 対決に関しては外部にも放送される。ロキの退路は完全に絶った。


 そもそも大会自体のルールは酷いものだった。

 ランダム性が高く、構築などを無視して勝負が決まることも多々あるというのに、シングル一本勝負のトーナメント形式で、且つその一戦で全てのフレイアを渡し、そして大会開始から相手より奪ったカードも全て勝者に渡すというものだった。これにより一回負けただけで全てを失ってしまうことになり、最後の勝者だけが全員のフレイアと他のアンティルールのカードを手に入れることになるのだ。

 

 ならば、勝者は一人だけなのだるか?

 いや……既にスリュムの策略はここにも展開されている。

 ロキを覗いた十五人は全て『フレイアファンクラブ』の会員なのだ!

 つまり、もしも一戦目ロキに敗北した場合でも二戦目に誰かが勝てばフレイアと奪われたカードは手元へと戻り、そしてサーバーにある九割ものフレイアを高確率で山分けにできるのだ!



 大会を観戦する者には様々な者がいるが、共通するのはスリュム達を応援する者ばかりということだった。

 そもそもロキはマナーが悪いだけではなく重課金で低ランクのプレイヤーを狩っているという噂が大きかった。その妬みと憎しみから天誅が下ることを望んでいないプレイヤーは多い。他にも多数のフレイアファンクラブの会員が観戦している。中には、最初にフレイア三枚を奪われた挙句課金パックをほとんど奪われた巨人もいる。彼等は一心にロキの所有する全てのカードが仲間へと奪われること望んでいた。


 さて、大会は簡単なトーナメント表が配られただけで開始された。当然、それもスリュムの計算の通りに組まれた組み合わせである。ロキの一戦目は彼女の部下である巨人である。そしてスリュムの一戦目は、彼女管轄の小人である。


 やはりロキのデッキはラグナロクデッキである。対する部下の巨人も同じラグナロクデッキであるが、執拗にロキの妨害によりラグナロクが起こる前に巨人はニヴル・ヘルに旅立つこととなった。

 そのロキの戦闘は配信されているので、スリュムも見ることができた。予定通り自分の対戦相手である小人に負けさせると、この光景にスリュムは画面の前でニタニタ笑った。

 

 次のロキの対戦相手はファンクラブ会員のムスペル・ヘイムでフレイアグッズを専門に取り扱っているドワーフである。彼のデッキは三国志デッキである。その対決はいい勝負となったが、最後の最後でロキによる『アース族の帰還』が決まり、ニヴル・ヘルより戻って来た『バルドル』と『ホズ』のコンボによる延命で『天下奇才の軍師 諸葛亮』が寿命を迎えたことで勝負がついた。

 この戦いでドワーフとの勝負は五分五分だろうと踏んでいたスリュムは、未だに笑顔を浮かべていた。当然だ。ここまでも想定内の展開なのだ。当然ながら勝ち進んでいるスリュムは、次で勝負が決まることを望みつつも更なる策略を廻らせている。


 ベスト4まで登りつめたロキの更なる対戦相手は一晩フレイアにハグされたことを永遠と自慢し続けているブリージンガンメイの作成に関わったドワーフである。そのドワーフのデッキは七つの大罪デッキである。『強欲の悪魔 マモン』からのアドバンテージと『怠惰の悪魔 ベルフェゴール』の能力ダウンによりロキの『魔獣 フェンリル』はニヴル・ヘルに旅立っていったが、続いてロキの『解き放たれる鎖』の効果により現れた『巨人を運ぶ船主 ロキ』によりフィールド一杯に並んだ下級巨人により『激情の悪魔 サタン』がやられ、そのまま押し切り、ロキが勝利を収めた。




 そして決勝戦は、ロキとスリュムの戦いになったのである。

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