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アースガルズの私様  作者: 富良野義正
オンラインカードゲームは『基本』無料
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オンラインカードゲームは『基本』無料 その二

 翌日もロキはログインすると、アースガルズの資金で課金したトールと対戦した。しかし今度の画面はまったく前日とは違った。画面の下の方、ロキのフィールドだけにカードが集中し、上側のトールのフィールドには何もカードがない。そのような状態のままロキの画面には『win』の文字が表示された。


「……少しくらいウィキを見て構築を考えたらどうなのだ? 大体、スターターよりも悪化しているではないか」

「貴様の言う通り課金したんだ! それなのに何故負ける! さては悪神、騙しやがったな!」

「少しはデッキを考えろ! 全部上級のカードではないか! それにテーマもバラバラだから何も出ないで終わるのだ! 大体、何故『北欧最高神オーディン』と『Yahweh』と『太陽神への生贄』が手札にあるのだ! 全部テーマデッキのロマンカードだろうが!」

「どれも高くて数値が強いのだから、全部入れた方が強いに決まっている」

「だから少しはウィキを読めと言っているのだ! まったく……ちょっと待て、個人チャットが来た」


 いきなり画面に表示されたチャットには、挨拶もなしに一言だけが書かれていた。


「こいつ馬鹿か? 《フレイア返してください》だと? 冗談じゃない。《交換なら応じてやる、但し『たぶらかしの幻影』と『火焔かえんの鍛錬』と『割れる海』と『活版印刷』とだ》と……」

「一番高いカードだったな。どれもデッキに入っているんだが」

「だから高級なカード何でも入れてんじゃねえ!」


 ロキが提示したカードは、フレイアの価値を何倍も上回るようなレアカードばかりだった。おまけに一枚多い。それは同時に取引を追い払うという意味が篭められている。ネトゲのやんわりとした断り方の一つだった。


「……ん?」


 だが次の瞬間、トレード要請コマンドが開かれた。そしてロキが応じると、そこには『たぶらかしの幻影』『火焔かえんの鍛錬』『割れる海』『活版印刷』がそれぞれ一枚ずつ表示された。

 すかさずロキは『フレイア』を三枚トレード画面に置いた。そして決定を押すと……おお、四枚のカードが手に入ったではないか!


「何だこいつ……何を企んでいやがる? まあ『フレイア』は限定版だから他のカードに比べて手に入りにくいが……」


 しかし相手の目論みはすぐあからさまになる。


 次に出たのは『アンティルール』の対戦申し込みである。相手がロキから奪いたいものは、やはり『フレイア』三枚だった。


「………………」


 相手と同条件をロキは相手に叩きつける。するとしばらくの沈黙の後、アンティルールの対戦画面が移る。

 ロキは手に入れたばかりの『火焔かえんの精錬』により『炎の巨人スルト』の召還と強化からラグナロク関連のコストを下げて戦い、ほぼ完封する形で勝ち、また三枚のフレイアを手に入れた。

 すぐまた個人チャットが飛んでくる。


「……《返して欲しければ『涙を流さぬ暗闇』と『炎の赤子の母殺し』と『天才軍師の言負かし』と『狂気を呼ぶ演説』と交換だ》」

「全てデッキの必須カードってウィキに書いてあったぞ。俺のデッキに全部入っているくらいなのに、何故必要なんだ?」

「テーマに必須って意味だろうが! カードゲームまで脳筋やってんじゃねえ! って、こいつ、またトレード出して来たぞ? え、マジで受けるのか? まあおかげで爆アドだが……またアンティルールでの対戦か。こいつ、何で最初からフレイア六枚で交換って言わねえんだ? まあ、いいが……」


 このようなロキによるレアカードの略取はあと十回ほど行われた。ロキは知らなかったが、フレイアのファンクラブではアンティルールで奪うことに価値があると考える集団がいて、トレードでリセットしながら奪うまでやるというのが暗黙の了解になっていた。




 彼らにしてみれば、幾らつぎ込もうがフレイアを奪えたらそれでよかったのだろう。

 問題はロキが想像以上に強く、そしてフレイアのファンクラブが強欲すぎたということだった。

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