17、お礼参り
受験が終わって、結果報告に、先生のお宅へ伺った。
音高のY先生は勿論、Y先生を紹介してくださったX先生にも報告に伺う。
それからピアノの先生のお宅にも伺った。
ピアノの先生は、受験生専門の先生で、とても厳しい先生だった。
だけど、教え方は素晴らしくシステマチックで、確かな耳を持って私を導いてくれた。
初めて私のピアノを聞いた時、先生は少しびっくりしていた。
そんなに弾けないのに、なぜ音高を目指すのか、先生には理解ができなかったらしい。
毎回レッスンで、
「100回弾いて来なさい」と言われた。
勿論、家に帰って100回弾いた。毎日100回。ちゃんと弾いた。
で、次のレッスンに行くと
「100回弾きなさいって言ったでしょう!」
と怒られる。
どうやら先生には100回弾いたようには聞こえなかったらしい。
100回弾けばいいのではない。100回弾いたくらい上達していなければならないのだ。
たったそれだけの数小節に、半年くらいかかりっきりだった。
だけど、その100回を(回数ではなく技術で)クリアできると、そこから先はどんどん進んだ。
すっごく怖い先生だった。
受験結果の報告に伺った時、先生は初めて微笑んだ。そして
「泣かなかったのはあなたが初めてよ」
と、言った。
泣いて良かったのか。




