8、く、屈辱だ
年子の姉は、6年生になって急にピアノを習い始めた。
お姉ちゃんがやってるから、私もやりたくなり、その1年後、私も6年生になって、ピアノを習い始めた。
これで、ピアノの正しい弾き方を教えてもらえることになった。
ピアノの正しい弾き方は、なかなか恥ずかしいものだった。
なにせ、6年生になって初めてのピアノ。
私が懸命に「バイエル」(入門者の教本)を弾いていると、私の次に来た低学年の子に
「あのお姉ちゃん、大きいのにバイエルやってるー」
と、笑われる。
くそぅ。
こんな簡単な曲。一回のレッスンで10曲くらい合格するのに、まだ低学年の子にすら追いつけないとは。
屈辱だ。
とは思いながらも無言で、レッスンをする私。
いつになったら恥ずかしくなくなるのだろうか。
習い始めて半年後、発表会があった。
なんだったかなぁ。「アルプスの夕映え」と「さくら幻想曲」だったかな、そういう曲を弾いた。
私はものすごいあがり症なので、本当に全身が震えていた。
ガタガタと震えながら、なんとかピアノを弾いていると、客席の一番前に座っていたちびっ子が
「あのお姉ちゃん、ふるえてるよ」
と言った。曲はちゃんと弾けてるのに。
く、屈辱だ。




