6、合唱の写真
小学4年生になると、課外クラブというのに入ることができる。
コレは強制ではなくて、入りたい人だけ、入りたいクラブに所属できる小学校の部活。
私の通った小学校には、ミニバスケ部と合唱部があった。
私は合唱部に入った。
顧問は音楽のW先生。厳しいと評判で、髪の毛がもじゃもじゃで口紅が赤い若い先生だった。
先生はいつも立ってピアノを弾いていた。
椅子にどっかり座っていると、指導がしづらいのか、いつも立っていた。
ピアノ、弾きにくそう、とは思ったけれど、先生のピアノはとても上手だった。
とっても厳しい先生だったけれど、私たちはみんな先生が大好きだった。
よく叱られて、泣いたこともあった。
だけど、先生は褒めるのも上手だった。
合唱祭の写真が貼りだされた時、わざわざその中から一枚を持って来て、みんなの前で披露した。
その写真は私の歌っている顔だった。
ちょうど「オ」の口をしている顔で、見事なまでの縦長の口をしていた。
先生は皆に見せながら
「マロンさんの口はいつもお手本のようです」
と、言ってくれた。
当時の私は、非常な恥ずかしがり屋で、人前にお手本で立つことができなかった。先生はそれをわかっていて、本人ではなくて写真を使ってくれた。
今でもあの写真は大事に持っている。




