13、末っ子練習風景
末っ子は小さなころから集中力があり、ピアノの練習があまり苦にならないタイプらしい。
そして、何かすごく楽しそうだ。
ポロンポロン♪と末っ子が練習する音が聞こえてくる。
そして何やら喋り声も聞こえる。
一応防音の部屋なので、あまり音は聞こえないのだけど、どういうわけか喋っているのが聞こえる。
ということは、かなり大声で喋っている。
何をやっておるんじゃ。
「おかあさん、できたから伴奏弾いて」
と、曲が弾けるようになると私に頼みに来る。
「さん、はい!」
と、末っ子が号令をかけると一緒に弾きはじめる。
まあ、1人で譜読みして、1人でこれだけ弾けるようになれば立派なもんだ。
と、思っていると、すっとこどっこいな変な音が聞こえる時がある。
「そこ、違う、なんだその音」
と指摘すると、うひゃひゃひゃひゃと大笑いする末っ子。
「ヘンでしょう?僕が考えたの」
はい!?
何勝手に編曲してるの?しかも、ちょっとふざけた音がする。ただ間違えちゃった音じゃなくて、末っ子なりに計算した“間抜けに聞こえる音”らしい。
たしかに、相当間抜けな音だ。
コントでも使えそうなダメっぷり。
しかも
「おかあさんも、そっちで、絶望的な和音を弾いてね!」
などと、勝手に違う曲を所望してくる。
そんな簡単にできるか!と思いつつも、低いところで不協和音を弾くと喜んでくださる。




