14、替えが効く
一流のオペラなどの場合は、役の人に万が一、何かあった時のためにアンダーと呼ばれる、控えの歌い手が準備されている。
私はアンダーですら、なったことはないけれど・・・
まあ、こういう舞台は一流どころだけである。
普通、舞台で歌うのは私の役目である。
オペラだろうが、リサイタルだろうが、私の名前が載っていたら、それは私が歌わなければならないのだけど、具合の悪い時がある。
いきなりのインフルエンザだったり、ノロウィルスだったり、単なる風邪でも咳が止まらなかったりすることがある。
だけど、私の舞台にアンダーなどあるはずがない。どんなに具合が悪かろうと、歌うのは私である。
朝起きて「う、お腹が痛い」ということがあった。(ノロウィルスだった)
大急ぎで伴奏者と主催者さんに連絡を入れる。
そして、お腹が痛い。と訴えたところで・・・・
「じゃ、頑張って来てくださいね」
と、言われるだけである。
そりゃそうだ。お腹が痛いからって休めるはずがない。
家を出るまで、トイレにこもって、なんとか出発。
電車に乗って座って、気が付いたら気を失っていた。
そんな状態でも舞台に立つ。
いやー、あの時はホント辛かった。でも、何とかなった。
体調管理も仕事のうちとはいえ、あの時の自分は頑張ったから、とりあえず褒めておく。




